半年前、コロナ禍の混乱時期に依頼いただいたいた南青山のクリニックが完成。
医療経営が厳しくなるであろうこの時期にクリニックを開業するの?とビックリしたものですが、こんな時だからこそ医療を充実させる意味がある事を、今更ながら感じています。
スキップフロアと、領域を分けるアール壁が特徴的な設計になっています。スキップフロアは目線が変化しますね。本来小さな空間に奥行と抜け感を与えてくれました。
思った以上に、レゴブロックで形をつくった様な面白い場になっています。
このクリニックのコンセプトは「仙桃」
(東洋医学なので・・・クリニックの名称も仙桃に由来しています)
ビジュアル面でも「仙桃」をモチーフにしています。
コーポレートカラーを「桃色」。
アール壁は「桃」の曲線をイメージ。
ロゴも「桃」をモチーフに。
東洋医学っぽさは消して、居心地の良い空間にしてみました
スキップフロアとは
スキップフロアとは、建物の中で床の高さを部分的に変えて、階層をずらすように設計された空間のことを指します。この設計手法は、水平なフロアの代わりに、複数のフロアを少しずつ高さを変えて配置することで、空間に立体感や開放感を与えるものです。以下にスキップフロアの特徴や利点について詳しく説明します。
スキップフロアの特徴
床の高さの変化: スキップフロアでは、床の高さが少しずつ異なるため、完全な一続きの階ではなく、ステップを使って移動します。この高さの違いにより、空間の区切りが自然に生まれ、用途に応じたエリアを作ることができます。
視覚的なつながり: スキップフロアの設計では、異なるフロアが視覚的に繋がっているため、家全体が一体感を持つようになります。階層がずれていることで、プライバシーを保ちながらも、家族の活動が視界に入ることができます。
空間の有効活用: スキップフロアは、狭い土地や変形地でも有効に空間を利用できるため、限られた敷地での住空間の最大化が可能です。地形に合わせてフロアの高さを調整することで、無駄のない空間利用ができます。
デザインの多様性: スキップフロアはデザインに自由度があり、階ごとの目的や用途に応じて、異なる機能を持たせることができます。例えば、リビング、キッチン、ダイニング、子供の遊び場など、異なるフロアで別々の活動が行われることが可能です。
スキップフロアの利点
開放感のある空間: 高低差を活かすことで、視線が遠くまで届くようになり、広がりのある空間を演出できます。天井が高く感じられることもあり、実際の面積以上に広さを感じることができます。
プライバシーの確保: 一部のフロアを少し高くすることで、プライベートなスペースを作りやすくなります。例えば、リビングの一角を少し高くすることで、くつろげるスペースや趣味のコーナーを設けることができます。
光と風の通り道: スキップフロアの設計では、床の高さの変化により、光や風が通り抜けやすい構造が作れます。これにより、自然光を取り込みやすく、風通しの良い住環境が実現します。
子供やペットに優しい設計: スキップフロアの段差が緩やかであれば、子供やペットにとっても安全で動きやすい環境が作れます。異なるエリア間のアクセスがしやすくなるため、家族全員が快適に過ごせます。
スキップフロアのデメリット
建築コストが増える可能性: 複雑な設計や施工が必要になるため、平面的なフロア設計に比べて建築コストが増えることがあります。
家具の配置が難しい場合がある: 床の高さが異なるため、家具の配置が制約を受けることがあります。家具を配置する際には、フロアの高さに合わせた工夫が必要です。
バリアフリー性の課題: 段差があるため、車椅子や高齢者にとっては移動が難しくなる場合があります。バリアフリー設計を考慮する場合は、スキップフロアの設計に注意が必要です。
スキップフロアは、視覚的な広がりと空間の有効活用が可能な設計手法であり、個々のライフスタイルに合わせて様々な空間演出ができるのが魅力です。
R壁とは
「R壁」とは、建築やインテリアデザインにおいて、曲線を描いた壁のことを指します。「R」は「Radius(半径)」の略で、半径を持つ円弧のように曲がった形状を意味します。このため、R壁は一般的な直線的な壁とは異なり、曲面を持つ柔らかいラインを描いた壁です。以下にR壁の特徴や利点について詳しく説明します。
R壁の特徴
曲線を持つデザイン: R壁は直線的な壁ではなく、円弧や波状の曲線を描いた形状をしています。これにより、視覚的に柔らかく、動きのある印象を与えます。デザインに自然な流れや優雅さを加えるために使用されることが多いです。
視覚的な広がりと奥行き: 曲線を持つことで、空間に広がりや奥行きを感じさせる効果があります。特に狭い空間や限られたスペースにおいて、R壁を取り入れることで、空間が広く見えるようにすることができます。
空間のゾーニング: R壁は空間を柔らかく区切るのに適しており、プライベートなエリアとパブリックなエリアを自然に分けるために使われることがあります。壁の曲線が視線を誘導し、空間の流れを制御する役割も果たします。
建物の外観デザイン: R壁は建物の外観デザインにも用いられることがあります。ファサードに曲線を取り入れることで、建物全体に個性や特徴を持たせ、視覚的にインパクトのあるデザインを実現できます。
R壁の利点
柔らかい印象とデザイン性: R壁は、直線的な壁に比べて柔らかい印象を与えるため、リラックスした空間を演出するのに適しています。曲線のラインが視覚的に心地よく、空間に温かみや優雅さを加えることができます。
空間の活用: 曲線を持つR壁は、デッドスペースを減らし、効率的な空間活用を可能にします。曲線を使ったデザインにより、狭いスペースや不規則な形状のスペースでも、効果的に利用することができます。
音響効果の改善: R壁は音の反響を柔らかくし、音響効果を改善することができます。特に音楽室やシアタールームなど、音の響きを重視する空間において、R壁が効果的に機能することがあります。
視線のコントロール: 曲線の壁が視線を柔らかく誘導し、視覚的な流れを作るため、空間の奥行き感を演出するのに適しています。これにより、狭い空間でも広がりを感じさせることが可能です。
R壁のデメリット
施工コストが高い: R壁は直線的な壁に比べて施工が複雑で、技術的な要求が高くなるため、施工コストが増加する可能性があります。職人の技術や特別な材料が必要になる場合もあります。
家具配置の制約: 曲線の壁に合わせた家具配置は、直線の壁に比べて難しくなることがあります。特に大型の家具や収納を配置する際には、壁の形状に合わせた工夫が求められます。
メンテナンスの課題: R壁の曲線部分は、清掃や修理が直線的な壁に比べて手間がかかることがあります。また、壁紙や塗装を施す際も、曲線に合わせた作業が必要となります。
R壁は、その曲線のデザインによって空間に柔らかさや奥行きをもたらし、視覚的な広がりを感じさせる効果があります。インテリアや建築デザインにおいて、個性的で魅力的な空間を作りたい場合に有効な選択肢です。しかし、施工やメンテナンスに注意が必要であり、コストや使い勝手も考慮しながら取り入れることが重要です。
奥行が感じられるクリニック
奥行きが感じられるクリニックのデザインは、患者にリラックスできる環境を提供し、空間の使い方に工夫を凝らすことが重要です。奥行き感を演出することで、狭い空間でも広がりを感じさせ、全体の印象を改善できます。以下に、奥行き感を出すためのデザインのポイントとアイデアについて詳しく説明します。
奥行き感を演出するデザインのポイント
空間のレイアウト:
ゾーニング: 明確なゾーニング(空間の区分け)を行うことで、各エリアが自然に流れるように設計します。例えば、受付エリア、待合室、診察室などを段階的に配置し、視覚的な奥行きを持たせます。
スキップフロアや段差: 小さな段差やスキップフロアを取り入れることで、視覚的な奥行きを生み出すことができます。これにより、異なるエリアを明確に分けるとともに、空間に立体感を持たせます。
視覚的なトリック:
遠近法の利用: 床材や壁材に対して、遠近法を意識したデザインを施すことで奥行き感を強調できます。例えば、床の色をグラデーションにして、奥に行くほど暗くすることで、空間の広がりを演出できます。
ラインとパターン: 壁や床に使用するラインやパターンも奥行きを感じさせるために有効です。斜めのラインや縦のストライプが空間をより広く見せる効果があります。
照明の工夫:
間接照明: 天井や壁に間接照明を取り入れることで、柔らかい光を空間に広げ、奥行き感を演出できます。スポットライトやダウンライトを使って、特定のエリアを際立たせるのも良い方法です。
光と影のコントラスト: 照明を工夫して、空間に明るい部分と暗い部分を作り出すことで、立体的な印象を与えます。影をうまく活用することで、奥行き感が増します。
素材と色使い:
色のグラデーション: 壁や床に使う色のグラデーションを工夫することで、奥行き感を生み出すことができます。たとえば、壁の下部を濃い色にし、上部を明るい色にすることで、高さの広がりを強調できます。
鏡やガラスの使用: 鏡やガラスの素材を取り入れることで、反射によって空間を広く見せることができます。待合室や診察室にガラスのパーティションを使うのも効果的です。
家具とディスプレイ:
コンパクトでシンプルな家具: 大きな家具や過剰な装飾は空間を圧迫することがあるため、コンパクトでシンプルなデザインの家具を選びましょう。収納スペースやディスプレイの位置も工夫して、スペースを有効に活用します。
奥行きを感じさせるディスプレイ: 壁に飾るアートや装飾も奥行き感を演出するのに役立ちます。例えば、立体的なアートやレイヤーを使ったディスプレイが効果的です。
自然光と外部景色:
大きな窓や開口部: 大きな窓や開口部を取り入れることで、自然光を取り入れ、外部景色と内装をつなげることができます。これにより、空間がより広く感じられます。
緑の取り入れ: 植物やグリーンを取り入れることで、自然とつながり、空間に奥行き感を加えることができます。
奥行き感を演出するクリニックのデザインでは、空間のレイアウト、視覚的なトリック、照明、素材と色使い、家具とディスプレイ、自然光の取り入れなど、様々な要素を考慮して設計を行うことが大切です。これらの工夫を通じて、クリニック内の空間が広く、開放的に感じられるようにすることができます。
抜け感とは
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「抜け感(ぬけかん)」とは、空間やデザインにおいて、視覚的または物理的に開放感や軽やかさを感じさせる要素を指します。特にインテリアデザインや建築において用いられることが多い概念で、狭い空間を広く感じさせたり、圧迫感を軽減したりするための工夫を意味します。
抜け感を演出するための要素
視覚的な開放感:
透明な素材の使用: ガラスやアクリルなどの透明な素材を取り入れることで、視覚的に広がりを持たせ、空間に軽やかさを加えることができます。例えば、大きなガラス窓やガラスのパーティションを使うと、視覚的に空間が広く感じられます。
スキップフロアや段差の活用: スキップフロアや軽やかな段差を取り入れることで、空間に立体感を加え、視覚的に広がりを演出します。視線が自然に奥行きを感じさせる効果があります。
自然光の取り入れ:
大きな窓や開口部: 大きな窓や開口部を設けることで、自然光を豊富に取り入れ、明るく開放感のある空間を作ります。自然光は空間を広く感じさせ、心地よい環境を提供します。
明るいカラーパレット: 明るい色合いの壁や床を選ぶことで、光を反射させて空間を明るくし、視覚的な広がりを演出します。
空間のデザイン:
シンプルでミニマルなデザイン: シンプルでミニマルなデザインは、空間に余計なものを取り入れず、スッキリとした印象を与えます。これにより、空間が広く感じられるとともに、落ち着いた雰囲気が生まれます。
オープンプラン: 壁を取り払ってオープンプランにすることで、部屋全体が繋がり、空間の広がりを感じやすくなります。視覚的にも物理的にも開放感が得られます。
軽やかな家具やディスプレイ:
コンパクトで軽量な家具: 軽量でコンパクトな家具を選ぶことで、空間が圧迫感を感じさせず、広く感じることができます。可動式の家具や脚付きの家具も効果的です。
オープン収納: オープン収納やシェルフを取り入れることで、収納スペースが視覚的に軽やかになり、空間に抜け感を与えることができます。
空気の流れを考慮した設計:
風通しの良いレイアウト: 空気の流れを考慮した設計により、空間が息苦しくならず、快適に過ごせる環境が作れます。通気口や風の通り道を設けることで、空気の流れを意識したデザインが可能です。
アートと装飾の使い方:
軽やかなアートや装飾: 空間に軽やかさを加えるアートや装飾を取り入れることで、視覚的に開放感を演出できます。例えば、浮遊感のあるデザインや、透明感のあるアートが効果的です。
「抜け感」は、空間やデザインにおいて視覚的または物理的に開放感を持たせるための工夫や要素を指します。透明な素材の使用、大きな窓や明るいカラーパレット、シンプルなデザイン、軽やかな家具やディスプレイ、風通しの良いレイアウト、軽やかなアートや装飾などを取り入れることで、空間に軽やかさや広がりを感じさせることができます。
クリニック設計プロジェクトの解説
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