子育て家族の楽しく暮らす、マンションリノベーションの設計方法。
- t-ogino
- 11月3日
- 読了時間: 11分

「設計監理した、子と猫の家:マンションリノベーションから」
お子さん、走り回って遊んでました!家全体が遊具にもならないかな、なんてことを考えながら設計をしました。造作の上段ベットとおもちゃ収納、小上がりと立体に重ねる事で、効率的ながら、ジャングルジムの様な子供の遊び場に。小上がりで遊んだおもちゃは、サッとベット下の収納にしまって。

2.3mの低い天井の中に、2段ベット、小上がりつくり立体的な場所を製作。子供が遊ぶ遊具の様な家にもなりました。家族がみんなで遊んでる場所に。色々なところに居場所があるって、良いですね。

グレーの壁がお気に入りの場所なのかな。
子育て家族のマンションリノベーション設計
家づくりの打ち合わせの最中、お子さんが走り回って遊んでいる姿が目に入りました。リビングの隅から、廊下を駆け抜け、また戻ってくる。その軽やかな足取りに、空間が一気に生き生きとし始めたように感じました。「家全体が遊具になったら、楽しいだろう」なと考えました。
家は暮らしの基盤であり、安心と機能性が求められる場所です。でも、子どもにとっての家は、それだけではない。日々の冒険が始まる舞台であり、想像力が羽ばたく場所であり、時には秘密基地にもなる。そんな視点から、今回の設計はスタートしました。
まず目指したのは、限られた空間の中に“立体的な遊び場”をつくること。天井高は2.3メートルと低めでしたが、それを逆手に取り、空間を縦に積み重ねることで、遊びと暮らしが融合する場を生み出しました。造作の上段ベッドは、ただ寝るための場所ではありません。梯子を登ればそこは子どもだけの特別な空間。秘密の読書スペースにもなり、ぬいぐるみたちの集会所にもなる。ベッドの下にはおもちゃ収納を設け、小上がりで遊んだ後は、サッと片付けられるように。遊びの流れが自然と整理整頓につながるよう、動線と収納を一体化させました。
小上がりは、家族の団らんの場でありながら、子どもにとってはステージにもなります。ぴょんと飛び乗って、おままごとの舞台にしたり、積み木を並べて街をつくったり。時にはお父さんがゴロンと昼寝をする場所にもなり、夜には家族で絵本を読む場所にもなる。そんな多用途な空間が、家族の時間を豊かにしてくれます。
この立体構成は、まるでジャングルジムのよう。登る、降りる、隠れる、見渡す。子どもたちは空間の隅々まで使いこなし、まるで家全体がひとつの大きな遊具のように感じてくれると嬉しいです。
家の中には“居場所”を散りばめることを意識しました。家族が一緒に過ごす時間も大切ですが、それぞれが自分だけの時間を持てることも、同じくらい重要です。例えば、グレーの壁に囲まれた小さなコーナー。そこはお子さんのお気に入りの場所で、静かに絵を描いたり、ブロックを組み立てたり。壁の色が落ち着きを与え、周囲の喧騒から少し距離を置ける“自分だけの世界”をつくってくれます。
キッチンの脇には、ちょっとしたカウンター家具を設けました。料理をするお母さんのそばで、子どもが宿題をしたり、お父さんがコーヒーを飲みながら新聞を読んだり。家族がそれぞれの時間を過ごしながらも、視線が交差する場所。そんな“つながりのある孤独”が、家族の絆を自然に育んでくれます。
また、素材選びにもこだわりました。床には温かみのあるアッシュ(タモ)材を使用し、壁には柔らかな質感を取り入れました。手触りや足触りが心地よく、自然素材ならではのぬくもりが空間全体に広がります。木の床がまるで森の中の小道のように感じられると良いなと。
この家は、単なる“住まい”ではなく、暮らしの舞台です。朝起きて、梯子を降りるときのワクワク。小上がりに座って、家族と一緒に朝食を囲む時間。ベッドの上から見下ろすリビングの風景。どれもが、日常の中に小さな冒険をもたらしてくれます。
設計の過程では、何度も施主と打ち合わせを重ねました。お子さんの成長に合わせて、収納の高さを調整したり、ベッドの手すりの形状を見直したり。現場での微調整が、空間に命を吹き込む瞬間でもあります。“暮らしのリズム”を、実際の生活の中で感じながら、形にしていく。そのプロセスが、何よりも楽しく、やりがいのある時間でした。
お子さんが笑顔で走り回り、お父さんとお母さんがその姿を見守りながら、穏やかな時間を過ごしている。そんな日常の風景こそが、空間に命を宿らせるのだと改めて感じました。
家づくりとは、単に間取りを決めることではありません。そこに住む人の人生を、空間という形で支えること。子どもが成長し、家族の形が変わっていく中で、柔軟に寄り添える住まいであること。今回の設計では、その思いを込めて、ひとつひとつのディテールを丁寧に積み重ねていきました。
そして何より、この家が“遊び心”を忘れない場所であること。大人になっても、ふとした瞬間に童心に帰れるような、そんな空間があること。家族みんなが、笑顔で過ごせる場所であること。それが、私たちが目指した住まいのかたちです。
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一般的な子育て家族の家の、設計の考え方
子育て世帯にとって、住まいは単なる「生活の場」ではなく、家族の絆を育み、子どもの成長を見守る大切な舞台です。マンションという限られた空間の中でも、設計の工夫次第で、安心・快適・柔軟な暮らしを実現することができます。ここでは、子育て家族向けのマンションリノベーション設計の方法を、空間構成・素材選び・動線計画・将来対応・安全性・収納・制度活用など多角的に掘り下げてご紹介します。
1. 子育て世帯の暮らしに寄り添う空間構成
・LDKの一体化と視線の確保
子育て期の中心となるのは、家族が集うリビング・ダイニング・キッチン(LDK)です。対面式キッチンを採用することで、料理中でも子どもの様子を見守ることができ、安心感とコミュニケーションが生まれます。アイランド型やペニンシュラ型キッチンは、開放感と回遊性を高め、家事効率も向上します。
・多目的スペースの確保
リビング横に小上がりの畳スペースや可動式の間仕切りを設けることで、昼寝・遊び・勉強・来客対応など多用途に使える空間が生まれます。子どもが成長したら個室として仕切ることも可能です。
2. 安全性と素材選びの工夫
・床材と段差の配慮
転倒リスクを減らすために、段差のないバリアフリー設計が基本です。床材にはクッション性のあるコルクやフローリング材を選ぶと、衝撃吸収性が高く安心です。防音性も兼ね備えた素材を選べば、階下への音漏れも軽減できます。
・有害物質の排除
子どもが長時間過ごす室内では、ホルムアルデヒドなどの有害物質を含まない建材を選ぶことが重要です。F☆☆☆☆(フォースター)認定の建材を使用することで、空気環境の安全性が確保されます。
3. 家事動線と生活動線の最適化
・回遊性のある動線設計
キッチンから洗面室、ランドリースペース、収納へとスムーズに移動できる「回遊動線」は、家事の効率を大きく向上させます。特に子育て中は、洗濯・料理・掃除が同時進行になることが多いため、動線設計は重要です。
・玄関と収納の連携
ベビーカーや外遊び道具など、子育て世帯の玄関は物が多くなりがちです。玄関横に土間収納やシューズクロークを設けることで、出入りのストレスを軽減し、空間をすっきり保てます。
4. 収納計画と片付け習慣の育成
・子どもが使いやすい収納
子ども自身が片付けやすい高さ・位置に収納を設けることで、整理整頓の習慣が育まれます。おもちゃや絵本はオープン棚に、学用品はランドセルラックやカウンター下収納など、使う場所に合わせた配置が理想です。
・隠す収納と見せる収納のバランス
生活感を抑えたい場所には扉付き収納を、子どもの作品やお気に入りアイテムは見せる収納にすることで、空間にメリハリが生まれます。収納付き間仕切りや壁面収納など、限られた面積を有効活用する工夫も有効です。
5. 成長に合わせた可変性のある設計
・可動式間仕切りの活用
子どもが小さいうちは広いプレイスペースとして使い、成長に応じて個室に分けられるよう、可動式の間仕切りや引き戸を採用するのが効果的です。将来的には壁を撤去して再び広い空間に戻すことも可能です。
・ロフトや小上がりの活用
縦の空間を活かしたロフトや小上がりは、収納力を高めるだけでなく、秘密基地のような遊び場にもなります。子どもにとって特別な居場所となり、空間への愛着が育まれます。
6. 採光・通風・断熱の工夫
マンション特有の課題として、窓のない中部屋や共用廊下側の部屋の暗さ・湿気があります。室内窓やガラスブロック、欄間などを設けて、光と風を取り込む工夫が必要です。断熱性の高い二重サッシや遮音性のある建材も、快適性を高めるポイントです。
7. マンション特有の制約と対応策
・管理規約の確認
マンションでは構造壁の撤去や床材の変更に制限がある場合があります。防音基準や共用部分の扱いなど、管理規約を事前に確認し、設計に反映させることが重要です。
・設備配管の位置
水回りの移動には排水勾配や配管スペースの確保が必要です。無理な移動はトラブルの原因になるため、専門家のアドバイスを受けながら計画を立てましょう。
8.公的支援制度の活用
子育て世帯向けには、住宅ローン減税やリフォーム補助金などの公的支援制度が用意されています。自治体によっては、子育て支援リノベーション補助金や断熱改修支援などもあるため、事前に調査して活用することで、費用負担を軽減できます。
9. 設計・施工の進め方
・ヒアリングとライフスタイル分析
設計の第一歩は、家族のライフスタイルや価値観を丁寧にヒアリングすることです。子どもの年齢、生活時間帯、趣味、在宅ワークの有無などを踏まえ、空間の使い方を具体的にイメージします。
・専門家との協働
建築士と協働しながら、設計・施工を進めることで、構造的な制約や法規制にも対応できます。特にマンションは構造壁や配管の制限があるため、専門的な知見が不可欠です。
まとめ
子育て家族のマンションリノベーションは、単なる空間の刷新ではなく、家族の未来を育む設計です。限られた面積の中でも、視線・動線・収納・安全性・可変性を丁寧に設計することで、子どもがのびのび育ち、家族が心地よく過ごせる住まいが実現します。
子育て家族のマンションリノベーション設計プロセス
子育て家族向けのマンションリノベーションにおける「具体的な設計プロセス」を、実務的かつ感情的な視点の両面から詳しく解説します。空間の感触や家族の暮らしに深く寄り添う設計をするには、単なる手順ではなく「対話と変化の連続」として捉えることが大切です。
① ヒアリングとライフスタイル分析
• 家族構成と年齢:子どもの年齢や人数、将来の成長を見据えた空間の可変性を検討。
• 生活リズムの把握:起床・就寝・食事・遊び・学習・在宅勤務など、時間帯ごとの動線を可視化。
• 価値観の共有:親の育児方針、子どもとの関わり方、家族の理想の暮らし像を言語化。
• 感情的ニーズの抽出:安心感、つながり、個の尊重など、空間が満たすべき感情的要素を整理。
② 現地調査と既存空間の読み解き(制約と可能性の発見)
• 構造の確認:壁の位置、梁・柱の干渉、配管ルート、床材の制限などマンション特有の制約を把握。
• 採光・通風の分析:窓の位置、方角、隣接住戸との関係から、自然環境とのつながりを設計に活かす。
• 音環境の確認:上下階との遮音、子どもの足音や声への配慮。
• 収納・動線の現状把握:既存の収納量と配置、家事・育児の動線の課題を洗い出す。
③ コンセプト設計
• 設計テーマの設定:例:「家族が自然に集まるLDK」「子どもの成長に寄り添う可変空間」「親子の距離感を調整できる家」など。
• ゾーニングの検討:LDK、子どもスペース、水回り、収納などの配置を大まかに決定。
• 視線と距離の設計:親が子どもを見守れる位置関係、子どもが安心して一人になれる場所の確保。
• 素材と質感の方向性:木材、左官、ファブリックなど、触感や温度感を通じて空間の情緒を設計。
④ 詳細設計と図面化(感覚を技術に落とし込む)
• 平面図・立面図の作成:ゾーニングをもとに、寸法・構造・設備を反映した図面を作成。
• 収納設計:子どもが自分で片付けられる高さ・位置、成長に応じた可変収納の設計。
• 造作家具の検討:カウンター、本棚、小上がり、ロフトなど、空間に溶け込む家具を設計。
• 照明・電気計画:子どもの目線に合わせた照明、親子の活動に応じたスイッチ配置。
• 安全対策の設計:角の丸み、転倒防止、誤飲防止、コンセント位置など細部の配慮。
⑤ プレゼンテーションとフィードバック
• 図面の提示:家族が空間をイメージしやすいよう、視覚的にわかりやすく提示。
• 暮らしのシミュレーション:朝の支度、帰宅後の動き、週末の過ごし方など、時間軸で空間を体験。
• フィードバックの収集:家族の反応を丁寧に聞き取り、違和感や希望を設計に反映。
• 再提案と調整:感覚的なズレを修正し、納得感のある設計へとブラッシュアップ。
⑥ 施工準備と現場対応(設計を現実にする)
• 施工図の作成と確認:実施図面に基づき、施工業者と細部をすり合わせ。
• 素材の最終選定:サンプル確認、肌触りや色味のチェックを通じて、空間の質感を確定。
• 現場での微調整:寸法の誤差、構造的制約、家族の新たな要望に応じて柔軟に対応。
• 現場との対話:職人との連携を通じて、設計意図を丁寧に伝え、空間に命を吹き込む。








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