家族と猫がともに過ごす、小上がりのある暮らしと小上がり収納の設計
- t-ogino
- 4 日前
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お子さんが小さい家族は川の字で。寝室を兼用した、小上がりです。
小上がりの下には、収納をつくってスペースを有効に使っています。

小上がりは、子供の遊び場にもなり、寝室にもなり、多くの用途で使えます。
人も、猫もそれぞれのアーチ壁を通ります。
家族と猫がともに過ごす、小上がりのある暮らし
東京の住宅街に佇むマンションリノベーションしたの住まいには、家族の温もりと工夫が詰まった空間が広がっております。中心にあるのは、小上がりの畳スペースです。こちらは単なる寝室ではなく、子どもたちの遊び場であり、家族が川の字になって眠る場所であり、収納としても機能する、多用途の生活の舞台となっております。
小上がりという「暮らしの舞台」
この小上がりは、床から少し高く設けられた畳敷きのスペースで、和の要素を取り入れながらも、現代的な住まいに馴染むようデザインされております。畳の下には引き出し式の収納が組み込まれており、季節の寝具やおもちゃ、絵本などをすっきりと収めることができます。限られたスペースを最大限に活用するこの工夫は、都市部の住まいにおいて非常に有効です。
昼間は子どもたちがここで遊び、絵本を読んだり、積み木を並べたりします。畳の柔らかさは転んでも安心で、親御さんもそばで見守りながらくつろぐことができます。夜になると、家族が並んで布団を敷き、川の字になって眠ります。子どもが小さいうちは、親のそばで眠る安心感が何よりも大切です。小上がりは、そんな家族の絆を育む場所でもあります。
アーチ壁がつなぐ、人と猫の動線
この住まいには、もうひとつの大切な家族がいます。猫です。猫は家の中を自由に歩き回り、時には小上がりの下に潜り込んだり、棚の上に飛び乗ったりします。そんな猫のために設けられたのが、アーチ型の壁の通路です。人が通る大きなアーチと、猫が通る小さなアーチが並んで設けられており、それぞれのサイズに合わせた動線が確保されております。
このアーチは、単なる通路ではありません。空間に柔らかな印象を与え、視線の抜けをつくることで、部屋全体に広がりをもたらしております。猫がアーチをくぐる姿は、まるで物語のワンシーンのようで、家族の暮らしにささやかな喜びを添えてくれます。
子どもと猫が共に育つ空間
棚には、ラベル付きの収納ボックスが並び、絵本やおもちゃが整然と収められております。子どもが自分で片付けを覚えられるように工夫されたこの収納は、成長を促す教育的な役割も果たしております。棚の上には猫が登れるスペースもあり、家族の目線と猫の目線が交差する場所となっております。
窓から差し込む自然光が、畳や木の床をやさしく照らします。昼下がりには、猫が窓辺で日向ぼっこをし、子どもがその隣で絵を描きます。そんな何気ない日常の風景が、この空間には詰まっております。
小さな工夫が生む、大きな快適さ
天井には白い配管が走り、照明は埋め込み式で空間をすっきりと見せております。壁には時計や温度調整のパネルが設置されており、機能性も抜群です。小上がりの隣には、ペット用の丸いくり抜きが施されたキャビネットがあり、猫が安心してくつろげる場所にもなっております。
このように、家族の暮らしと猫の習性を丁寧に観察し、それぞれの動線や居場所を設計に落とし込むことで、誰にとっても心地よい空間が生まれております。設計者の細やかな配慮と、住まい手の愛情が感じられる住空間です。
空間が記憶を育む
この家には、祖父から受け継いだスピーカーが安全に設置されています。家族の記憶を大切にしながら、現代の暮らしに馴染ませる工夫は、単なるインテリアを超えた意味を持っております。子どもが成長するにつれ、この空間で過ごした日々が記憶となり、家族の物語として刻まれていくことでしょう。
小上がりで眠った夜、猫と遊んだ午後、アーチをくぐって笑った瞬間。それらすべてが、この家の空気をつくっております。

小上がりと下部収納の設計ポイント
1. 小上がりとは何か:空間に「段差」という物語を持ち込む
小上がりとは、床面より一段高く設けられたスペースのことを指します。和室の畳敷きスペースとして設けられることが多いですが、近年ではリビングの一角やワークスペース、ペットの居場所としても活用され、用途は多岐にわたります。
この「段差」は単なる物理的な高低差ではなく、空間に意味を与える装置です。視線の高さが変わることで、空間の使い方や心理的な境界が生まれ、家族の動線や過ごし方に緩やかな変化をもたらします。特にオープンプランの住まいにおいては、壁を立てずに空間を分節する手法として、小上がりは非常に有効です。
2. 小上がりの設計ポイント
① 高さ設定:使い方に応じた寸法設計
小上がりの高さは、収納量・使い方・安全性によって決まります。一般的には300mm〜450mm程度が多く、以下のような使い方に応じて調整します。
• 座る・寝転ぶ用途(畳敷き):300mm前後が適切。段差が大きすぎると昇降が億劫になり、特に高齢者やペットには不向き。
• 収納重視の場合:400mm〜450mm程度に設定すると、引き出しや扉収納の容量が確保しやすい。
• ベンチ的用途(ダイニング併設など):座面として使う場合は、椅子の座面高(約420mm)に合わせると快適。
高さは単なる数字ではなく、空間の使い方や身体感覚に直結する要素です。家族構成やペットの動線、将来的な身体の変化も見据えて設計することが重要です。
② 素材選び:触感と視覚の調和
小上がりの床材には、畳・無垢材・クッションフロアなどが選ばれますが、素材の選定は空間の印象と使い心地に大きく影響します。
• 畳:柔らかく、座ったり寝転んだりするのに最適。調湿性もあり、和の雰囲気を演出できる。
• 無垢材:木の温もりが感じられ、ナチュラルな空間に馴染む。ペットの爪にも比較的強い。
• クッションフロア・タイルカーペット:メンテナンス性が高く、ペットの粗相にも対応しやすい。
素材は単なる機能ではなく、空間の感性を形づくる要素です。家族が触れる頻度の高い場所だからこそ、五感に響く選択が求められます。
③ 照明との関係:段差が生む陰影を活かす
小上がりは床面が高くなることで、周囲に陰影が生まれます。この陰影を活かすことで、空間に奥行きと表情が加わります。
• 間接照明(足元・段差下):夜間の安全性を高めると同時に、空間の演出効果も高い。
• 天井照明とのバランス:小上がり上部にペンダントライトを設けることで、空間の独立性を強調できる。
照明は機能だけでなく、空間の「気配」をつくる要素です。小上がりの段差が生む陰影と照明の関係性を丁寧に設計することで、空間に詩的なニュアンスが宿ります。
3. 小上がり下の収納設計ポイント
小上がりの下部は、収納として活用することで空間効率が格段に向上します。ただし、収納は「しまう」だけでなく、「取り出す」動作まで含めて設計する必要があります。
① 収納タイプの選定:使いやすさと構造の両立
収納の形式には以下のような種類があります。
収納形式は、使う人の動線や頻度に応じて選定することが重要です。特にペット用品や子どものおもちゃなど、日常的に使う物は引き出し式が便利です。
② 通気性と安全性:閉じた空間のリスク管理
収納内部は閉じた空間になるため、通気性と安全性の確保が必要です。
• 通気孔の設置:湿気がこもらないよう、収納内部に通気孔を設ける。
• 耐荷重設計:小上がり上で人が座ったり寝転んだりするため、構造的な強度が必要。
• ペットの安全性:収納の隙間にペットが入り込まないよう、開閉部の設計に配慮する。
収納は便利さだけでなく、空間の安心感にも関わる要素です。特にペットや子どもがいる家庭では、細部の安全設計が欠かせません。
③ 記憶をしまう場所としての収納
収納は単なる物理的なスペースではなく、記憶をしまう場所でもあります。祖父のスピーカー、家族のアルバム、ペットの思い出の品など、日常に溶け込ませながらも大切に保管したいものがあります。
小上がり下の収納は、そうした「記憶の居場所」としても機能します。頻繁には使わないけれど、いつでも取り出せる距離にある。そんな収納のあり方は、空間に優しさと深みをもたらします。
4. 小上がりがもたらす空間の関係性
小上がりは、空間の中に「関係性」を生み出します。段差によって視線が変わり、動線が変わり、過ごし方が変わる。家族が自然と集まり、ペットが安心して過ごせる場所になる。
また、小上がりは「舞台」のような存在でもあります。子どもが遊ぶ場所になり、ペットが昼寝する場所になり、時には来客のための座敷にもなる。日常の中で役割が変化する柔軟性こそが、小上がりの魅力です。
5. 設計者としての視点
小上がりとその収納を設計することは、単なる機能設計ではありません。それは、空間に物語を宿す行為です。家族の記憶、ペットとの関係、暮らしのリズムを読み取り、それを形にします。








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