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スケルトン→断熱、マンションリノベーション工事の始め方。

  • 執筆者の写真: t-ogino
    t-ogino
  • 7月14日
  • 読了時間: 6分

更新日:8月22日

スケルトンマンション


マンションリノベーション、工事スタート。元々、某建築家さんの若かりし頃に設計したマンション。


既存はタイトに納めてあって遊びが無い寸法で、最初どうしたもんかねと思っていたんだけど、新築時の設計者はの出癖を読める様になってからは、きっちりはまる感じリノベ設計、進められた。


内装解体後の確認と調整。解体すると想定外の状況が発見される事があるんだけれど、今回大きな調整事項は無くホッと一息。逆に施主の要望をより入れ込めれたのでよかった。


完成が楽しみ。


断熱したマンション工事


断熱材を吹き付けたところ。ピンク色の部分が断熱材。外壁部分には万遍なく施工します。

で、2段ベットを施工してます。


エモい現場灯


現場灯が、エモい。


建築家の痕跡を辿るマンションリノベーション

|現場からの記録


マンションの一室をリノベーションするという仕事は、単なる空間の刷新ではありません。そこには、過去の設計者の思想や癖、そして住まい手の新たな暮らしへの希望が交差する、静かで濃密な対話が存在します。今回のプロジェクトは、まさにそんな“対話”から始まりました。


このマンションは、ある著名な建築家が若かりし頃に設計したものです。図面を見た瞬間に感じたのは、緻密さと潔さ。寸法はタイトに納められていて、余白や“遊び”がほとんどありません。最初は正直、どう手を入れたらいいのか戸惑いました。リノベーションにおいて、既存の寸法に柔軟性がないというのは、設計の自由度を大きく制限するからです。

しかし、図面を読み込むうちに、設計者の“出癖”が見えてきました。壁の納まり、設備の配置、構造との関係性——それらが一貫したロジックで組み立てられていることに気づいたときました。若き日の建築家が、どんな思いでこの空間を設計したのか。その痕跡を辿るようにして、リノベーションの設計が進んでいきました。


解体という“発見”の瞬間


設計がある程度固まったところで、いよいよ内装の解体に着手しました。解体は、いつも少し緊張します。図面では見えない“現実”が、壁の裏や床の下に潜んでいることがあるからです。配管の位置が違っていたり、構造が想定と異なっていたり——そうした“想定外”は、現場では日常茶飯事です。


今回も、多少の不安を抱えながら解体を見守りましたが、幸いにも大きな調整事項はなく、ホッと胸を撫で下ろしました。むしろ、施主の要望をより深く反映できる余地が見つかり、設計の自由度が増したのは嬉しい誤算でした。空間が少しずつ“施主のもの”になっていく感覚です。


解体後の現場は、どこか神聖な空気が漂っています。長年使われてきた空間が、いったん“素”の状態に戻ることで、そこに新たな命を吹き込む準備が整います。壁の裏に隠れていた配線や構造材が顔を出し、空間の骨格が露わになる瞬間は、設計者としても非常に興味深く、また責任を感じる場面でもあります。


断熱材と、空間の“肌触り”

現在は断熱材の施工が進行中です。ピンク色の吹き付け断熱材が、外壁に均一に広がっていく様子は、どこか美しくもあり、頼もしくもあります。断熱材は、空間の快適性を支える基盤。夏の暑さや冬の寒さを和らげ、室内環境を安定させるための重要な要素です。

この断熱材が施工されることで、空間の“肌触り”が変わります。まだ完成していないのに、どこか安心感が漂い始めます。現場に立っていると、空間が少しずつ命を宿していくような感覚を覚えます。素材の匂い、職人の動き、工具の音——それらが混ざり合って、空間が“生きている”ように感じられる瞬間です。


断熱材の施工は、見た目以上に繊細な作業です。均一に吹き付けることで、熱の逃げ道を防ぎ、室内の温度を一定に保つことができます。特に外壁部分は、外気との接点となるため、万遍なく施工することが求められます。職人の手によって丁寧に仕上げられていく様子は、まるで空間に衣を纏わせているようにも見えます。


2段ベッドという“暮らしの工夫”

今回のリノベーションでは、2段ベッドの造作も進行中です。限られた空間を最大限に活かすための工夫であり、住まう人の暮らしに寄り添う設計の象徴でもあります。単なる寝具ではなく、収納やプライベート空間としての機能も持たせることで、空間の価値がぐっと高まります。


現場灯に照らされたそのベッドは、まだ未完成ながらも、どこか“エモさ”を感じさせます。光と影が交差するその瞬間、空間が少しずつ命を宿していくように思えるのです。設計図では表現しきれない“空気感”が、現場には確かに存在しています。

2段ベッドの設計には、施主のライフスタイルが色濃く反映されています。お子様の成長や、家族の過ごし方、収納の工夫など、細部にわたって打ち合わせを重ねました。その結果、単なる家具ではなく、暮らしの一部として機能する造作が生まれたのです。


若き建築家との“対話”

このマンションの設計者は、今では名の知れた建築家ですが、当時はまだ駆け出しだったそうです。図面や納まりからは、若さゆえの潔さと、挑戦的な姿勢が感じられます。寸法に遊びがないのも、空間に対する強い意志の表れでしょう。

そんな設計者の痕跡を辿りながら、今の暮らしに合わせた空間を再構築するというのは、非常に刺激的な作業でした。過去と現在が交差する場所。設計者と施主、そして空間そのものとの対話。そのすべてが、このリノベーションを豊かなものにしてくれています。

設計者の意図を尊重しながらも、現代の暮らしに必要な要素を丁寧に織り込むことで、空間は新たな命を得ます。それは、単なる改修ではなく、再創造とも言えるプロセスです。設計者としては、こうした“対話”を通じて空間が進化していく様子を見ることが、何よりの喜びです。


現場は日々、少しずつ変化しています。断熱材が吹き付けられ、造作が進み、空間が形を成していきます。職人たちの手によって、図面が現実になっていく様子は、何度見ても感動的です。

完成したとき、この空間にはどんな空気が流れているのでしょうか。施主がどんな表情でこの部屋に足を踏み入れるのか。設計者としては、その瞬間を思い描きながら、最後まで丁寧に仕事を進めていきたいと思います。

このマンションが、再び新たな物語を紡ぎ始める日が近づいています。若き建築家の情熱と、今の暮らしへの思いが交差する空間。その完成が、今から楽しみで仕方がありません。


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