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かもめ食堂に見る、北欧カフェのシンプル可愛い空間デザイン

|Ravintola KAMOME(ラヴィントラかもめ)|
10年ほど前、「かもめ食堂」という映画が公開されました。
フィンランドのヘルシンキを舞台にした、邦画です。
北欧の町並みの中にある、ゆったりした空気や時間が描写された素敵な映画でした。
映画に憧れ、ヘルシンキに旅行をしたとき、映画の舞台含め幾つかのカフェに行ってみました。
どこも可愛らしい空間です。
北欧のカフェ空間がどのようにデザインされているか、考えてみます。
実はストイック?シンプル可愛いカフェ
かもめ食堂の舞台の、カフェ「カハヴィラ・スオミ」今は、リニューアルして「Ravintola KAMOME(ラヴィントラかもめ)」というカフェになっています。
内装に使っている材料は、塗装された天井と壁、その他は木のみです。
多くの材料や、色彩は使っていません。
色彩は木の色と、白と淡い水色。
フィンランドのナショナルカラーとも言える、サックスブルーより少し淡くした独特の水色に塗られた、腰壁の板張りが印象的です。
フローリングやテーブル、カウンターの木の質感や、天井から吊るされた照明はこの淡い水色を引き立てる為にセレクトされたかのうようです。
水色の腰壁と、質感がかぶらず、主張しない、でも、なじんでいます。
ペンダント照明も、装飾のないシンプルなランプシェードですが、そのフォルムが可愛らしい。
北欧のゆったりしたやさしい空間は、シンプル可愛いで構成されていました。

|カフェカフカ・Photo by 株式会社小木野貴光アトリエ一級建築士事務所|
ワンポイントな装飾としての色彩デザイン
ヘルシンキにいる間、アクセスがよく待ち歩き中に何度か通ったカフェが、写真の「カフェカフカ」。
ヘルシンキ市中心街に円柱状の小さく、クラッシックな建物の劇場、スウェーデン劇場が有のカフェです。
人通りの多い市街の中、エア・ポケットの様な隠れ家的なカフェでした。
お気に入りで、何度か通いました。
天井も高く、おこもり感があり、時間を気にせず、ゆったりとしていられます。
古い劇場のカフェですので、柱のような装飾がほどこされていますが、実際は、天井の緑がアイキャッチポイントとして目に入ってくる空間です。
かもめ食堂の舞台のカフェは、淡い水色の腰壁がワンポイントの装飾になっていました。
多くの色を使いすぎないシンプルさ、でもその色が独特な色彩なのが、北欧デザイン空間の特徴です。

|カフェウルスラ|
海に開いて
北欧では、夏はわずかな期間です。
自然を感じられるカフェは、余計に心地よく感じます。
「カフェウルスラ」は、かもめ食堂のワンシーンにも出て来ました。
海辺のオープンカフェで、公園を抜けていくと、フィンランド湾を眺める席でゆる~いランチが食べられます。
空間づくりは何も無く、船の帆のようなテント地で出来た、日除けの造形が特徴です。
海と空と太陽の光を感じることだけに集中した場所をつくっています。
とにかく気持ちよい。
自然の空気を感じながら、食事をする心地よさは、古今東西変わりませんね。

|ローゼンダールスガーデン・Photo by 株式会社小木野貴光アトリエ一級建築士事務所|
ガーデンのカフェ
おまけに、、、フィンランドから変わってスウェーデンはストックホルム、ローゼンダールスガーデンのカフェです。
大きなガーデンの中にある、カフェですが、温室のような小屋の中の食堂です。
広い、スカンジナビアンガーデンは、洗練させきらず、人が作り上げた感が薄まり、自然の野趣が感じられる庭づくりをしています。
なんの変哲もない小屋の中ですが、自然の庭に囲まれて食すオーガニックな食事は、味覚を鋭敏にしてくれます。
感じてほしいことが、ひとつだけ
どのカフェも、色々なデザインはやっていません。
それぞれ異なっていますが、そこにある、空気感もシンプルで、ゆったり感ならゆったり感だけ。
色々な感情を感じる場所ではありませんでした。
デザインしすぎないデザインが、北欧にはありました。