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北欧、住まいの特徴とは?(3)借景は小さな窓で

執筆者の写真: t-oginot-ogino

更新日:2024年8月25日


北欧の住まい

|北欧の住まい|

日本では借景という、外部の景色を部屋の中に取り込み、眺めを楽しむ文化があります。

街路樹の桜の木は、春のひととき美しい借景を部屋の中から見せてくれます。

古くおしゃれな建造物なども、景観として窓から眺める絶好の景色です。

借景は読んで字のごとく。

他人の持ち物を、わが家の眺め・景色にしてしまおうという、あきれるほど貪欲な景色に対する私たちの想いが形になった言葉です。

自身の庭の植栽の眺めも、自然から借りて来ているという意味で、借景と言えるかもしれません。

外部の景色を眺めるが主眼です。

北欧の住まい

|北欧の住まい|

北欧の借景は小さな窓で

自然とのつながりが強く、自然が身近に存在する、存在させたい北欧の文化。

窓に映る景色は、日本のそれとは少し異なります。

大きな窓もありますが、小さな窓から自然を眺める景色のつくり方が上手いのが、北欧の住まいの特徴。

キャプチャーウィンドウという手法で、自然を窓という額縁で1枚の絵画のように切り取り、室内に自然という絵画を生み出します。

小さな窓ゆえに、見たくなりますし、余分な景色は見えず、純粋に緑の葉のみが切り取られたりもします。

小さな窓を色々な、壁や角度に配する事で、複数の景色が絵画となり部屋の中に形づくられます。


北欧の住まい

|北欧の住まい|

日本ではこの手法は、一般的ではありません。

景色自体を積極的に眺める文化だからかもしれませんが、銀閣寺の書院などは、障子を少し開けることで、そとの景色を掛け軸の絵のように見せる仕掛けをしています。

古来の手法が、北欧の今の住まいの手法と同じであるのは、興味深いところです。


銀閣寺同仁斎

|銀閣寺・同仁斎|

小さな窓の良さは、見たい景色、見たくない景色を選別し、見たい景色のみ室内に取り込めるところです。

日本の都市部や住宅地では、隣の家の窓や、古く汚れた塀など見たくない景色も多く、快適な光景のみ取り込むテクニックとして使えます。

北欧の住まい

|北欧の住まい|

居場所がたくさんある住まい

北欧の住宅を見ていると、居場所がたくさんあります。

先日、3世代5人の家族で住んでいる友人と話していたところ、5人にしては家が狭く居心地が悪い、居場所が無いと嘆かれました。

私たちの住まいでの居場所が以外に少ない。

リビングのソファもしくは居間のちゃぶ台の前だけという方も多いです。

居場所が複数あり、好きな居場所を選択できるというのは、心の余裕につながり生活の豊かさに直結します。

北欧の住宅では、ソファがあり、窓際にベンチがあり、小窓から外がみえる素敵なダイニングテーブルがある。

ちょっとしたワークスペースがあったり、屋外に休めるベンチもある。

居場所だらけです。

北欧の住まい

|北欧の住まい|

広い住まいだから出来ると思いがちですが、紹介している写真は、決して大きな家ばかりではありません。

小さな家でも、収納家具と一体になったベンチをつくることで、小さなスペースに効果的に居場所をつくっています。

窓際のソファー

リノベーション設計をした都心の狭小住宅でも、収納と一緒に、作り付けのソファーをつくりました。

上部には棚をつくり、ソファの箱の中もモノが入るようにし、古い狭小住宅にそれまで無かった居場所をつくりました。

快適な居場所が複数あるコト、これも北欧の住まいの特徴のひとつです。



借景とは


借景(しゃっけい)とは、建物や庭などの設計において、周囲の自然景観や風景を意図的に取り入れることで、視覚的な美しさや広がりを演出する手法です。具体的には、周囲の山々や木々、湖などを自宅の景観の一部として取り入れ、建物や庭の設計に活かします。


例えば、自宅の庭から見える遠くの山や川を景観に組み込むことで、庭や建物の一部としてその風景が「借りる」形になります。これにより、限られた敷地内であっても広がりや奥行きを感じさせることができます。


借景のポイントとしては、以下のような点があります:


  1. 視線の調整:借景を意識することで、視線を自然に広げることができる。例えば、庭の端に配置したベンチから遠くの山が見えるようにすることで、視覚的に広がりを感じることができる。

  2. 自然との調和:周囲の自然景観と調和することで、建物や庭が周囲と一体化し、より心地よい空間が生まれる。

  3. デザインの一部として:借景を取り入れる際には、その風景をどうデザインに組み込むかが重要です。例えば、窓の位置や形状を工夫して、遠くの風景を意識的に取り入れるといった方法があります。

  4. 季節感の演出:借景を利用することで、季節の変化を楽しむこともできます。例えば、桜の花が咲く季節にその美しい景色を取り込むことで、四季折々の自然の美しさを感じることができます。


借景をうまく取り入れることで、限られた空間でも豊かな景観を楽しむことができます。


北欧の住宅の借景は小さな窓


北欧の住宅における借景の小さな窓は、いくつかの理由によって特徴づけられています。


  1. 自然光の取り入れ: 北欧の地域は冬が長く、日照時間が短いため、自然光を最大限に取り入れることが重要です。小さな窓でも効果的に光を取り入れることで、室内を明るく保つことができます。


  2. 外部との調和: 北欧の住宅では、外部の風景を取り入れるために窓を慎重に配置することが一般的です。小さな窓を通して見る景色は、外部の自然と室内との調和を図るための手段とされます。また、小さな窓は外の景色を切り取って見せることで、より強く意識することができます。


  3. プライバシーの確保: 北欧の住宅は周囲の環境に配慮し、外からの視線を遮るために窓のサイズや配置を工夫します。小さな窓は、プライバシーを保ちつつ外部の景色を取り入れるための一つの方法です。


  4. 美的な要素: 小さな窓は、外部の風景をシンプルにフレーミングすることができ、室内から見たときに特定の景色を強調することができます。また、北欧のデザインはミニマリズムを重視しており、小さな窓もそのデザイン哲学の一部です。


  5. 断熱とエネルギー効率: 小さな窓は、暖房効率を高めるためにも効果的です。北欧は寒冷地域であるため、熱損失を最小限に抑えることが重要です。小さな窓は、エネルギー効率を高めるための手段の一つとして用いられます。


これらの要素が組み合わさり、北欧の住宅では小さな窓が借景に利用されることが多いのです。


居場所がたくさんある北欧の住まいの特徴


北欧の住まいには「居場所がたくさんある」という特徴があり、これは北欧デザインの考え方やライフスタイルに深く根ざしています。以下にその特徴を詳しく説明します。


1. 多機能な空間

北欧の住まいは、空間を多機能に利用することが一般的です。一つの部屋が複数の役割を果たすことが多く、例えばリビングルームが家族の集まる場所でありながら、同時に仕事や勉強をするスペースとしても使われます。家具やインテリアも、変化に応じて用途を変更できるように設計されています。


2. オープンプランのレイアウト

北欧の住宅は、オープンプランのレイアウトが特徴です。これは部屋と部屋の仕切りを最小限に抑え、開放的で広がりのある空間を作り出します。広いリビングダイニングや、キッチンとダイニングが一体化したレイアウトが一般的で、家族やゲストとのコミュニケーションが取りやすくなっています。


3. 快適な居場所の創造

北欧の住まいでは、快適な居場所を多く設けることが重視されます。これには、リビングルーム、読書コーナー、作業スペース、静かな寝室、屋外のバルコニーやデッキなど、さまざまな空間が含まれます。これにより、家族や個人がそれぞれのニーズに応じた場所を見つけやすくなります。


4. 自然との融合

北欧の住宅は自然との調和を大切にしています。大きな窓やガラスのドアを使って外の風景を取り入れることで、自然光を多く取り入れ、外の景色を楽しむことができます。屋外のテラスやバルコニーも、リラックスや社交の場として利用されます。


5. シンプルで機能的なデザイン

北欧デザインは、シンプルで機能的な美しさを追求します。家具や装飾は必要最低限でありながら、美しく使いやすいデザインが特徴です。収納スペースや家具も、多機能で使い勝手が良く、空間の効率的な利用を考慮されています。


6. 暖かさと親しみやすさ

寒冷な気候に対応するため、北欧の住まいは暖かく、親しみやすい雰囲気を持つように設計されています。木材や温かみのある素材が使われ、暖炉やストーブなどの暖房設備も重要です。これにより、家の中に暖かく、居心地の良い空間が確保されます。


これらの特徴により、北欧の住まいは機能的で快適な空間を提供し、家族全員がそれぞれのニーズに応じた居場所を見つけやすくなっています。


住まいの中にたくさんの居場所をつくる設計方法


住まいの中にたくさんの居場所を作る設計方法には、空間の使い方やデザインに工夫を凝らすことが重要です。以下にその方法を詳しく説明します。


1. オープンプランの活用

  • フレキシブルなレイアウト: 部屋と部屋を仕切る壁を少なくし、広いオープンな空間を作ります。例えば、リビング、ダイニング、キッチンを一体化させることで、家族が集まる多目的なエリアを作り出します。

  • 可動式パーティション: スペースが必要な時には可動式のパーティションやカーテンを使い、一時的に部屋を区切ることができます。


2. マルチファンクショナルな家具の使用

  • 折りたたみ式家具: 折りたたみテーブルや椅子、ベッドなどを使用することで、必要に応じて空間を柔軟に使うことができます。

  • 収納付き家具: ソファベッド、収納付きのベンチ、デスクなど、収納と他の機能を兼ね備えた家具を選ぶと、空間の効率が上がります。


3. 隠れたスペースの活用

  • アンダーステア収納: 階段下のスペースを収納や小さな読書コーナーとして利用します。

  • ベッド下収納: ベッドの下に引き出しやトランクを設置し、収納スペースを増やします。


4. ゾーニングによる空間分割

  • 異なるゾーンの設定: 一つの部屋を異なるゾーンに分けることで、多目的に利用できます。例えば、リビングルームの一角にオフィスエリアやプレイエリアを設けるなど。

  • 家具やカーペットの配置: ソファやカーペットを使って視覚的にエリアを分けることもできます。


5. 屋外スペースの活用

  • バルコニーやテラス: 屋外スペースにリラックスエリアやガーデニングエリアを作ることで、住まいの居場所を増やすことができます。

  • パティオやデッキ: 外のスペースを利用して、食事や社交の場を設けます。


6. 高い位置や下のスペースの利用

  • ロフト: 高い天井を活かしてロフトスペースを作り、寝室や作業スペースを設けることができます。

  • 地下室: 地下に収納や趣味の部屋を作ることで、地上のスペースをより多目的に利用できます。


7. 自然光と風通しの工夫

  • 大きな窓: たくさんの自然光を取り入れることで、空間がより開放的に感じられます。

  • 通風の工夫: 窓や換気扇を適切に配置して、部屋の空気が良くなるようにします。


8. 柔軟な空間設計

  • マルチユースエリア: 日常的な使い方に加え、パーティや集まりなどにも対応できるような空間をデザインします。

  • 収納の組み合わせ: 収納スペースを複数の使い方ができるように設計し、使わない時にはスペースを有効に使います。


これらの方法を組み合わせることで、住まいの中に多くの居場所を作り出し、より快適で効率的な生活空間を実現することができます。


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