引戸を使った玄関収納と、間接照明の美しいトイレの設計方法。
- t-ogino
- 14 分前
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外で使うものって、意外と多いんですよね。鏡を付けた玄関収納。引戸の中は下足入。それ以外は、お出かけグッズを仕舞う場所に。

間接照明を仕込んだスリットは、トイレットペーパーを置く、隠し収納に。隣のユニットバスの大きさを確保する為に、トイレのスペースができるだけミニマムに苦心して配置しました。
玄関収納と間接照明のトイレ
日々の暮らしの中で、外出にまつわる持ち物というのは、思いのほか多岐にわたります。傘や帽子、バッグにマフラー、季節によっては日焼け止めや虫除けスプレー、そしてペットとのお散歩グッズなど、家族構成やライフスタイルによってその種類はさまざまです。そうした「外で使うもの」を、いかに効率よく、そして美しく収納するかという課題は、住まいづくりにおいて意外と重要なテーマとなります。
今回の住まいでは、その課題に対して、玄関収納の設計にひとつの答えを見出しました。玄関という空間は、家の顔とも言える場所であり、来客を迎える第一印象を左右する場でもあります。だからこそ、機能性だけでなく、見た目の美しさや空間の整え方にも細やかな配慮が求められます。
この玄関収納には、鏡が設けられています。鏡は、外出前の身だしなみを整えるための実用性はもちろんのこと、空間に奥行きを与え、明るさを増す効果もあります。鏡のある玄関は、どこか凛とした印象を与え、住まい全体の雰囲気を引き締めてくれる存在です。
収納の扉は引戸になっており、その中には下足入れが設けられています。靴の収納は、単に数を収めるだけでなく、使いやすさや通気性、そして家族それぞれの使い方に応じた工夫が求められます。引戸の中に収めることで、玄関全体がすっきりとした印象になり、生活感を抑えながらも機能性を確保することができました。
さらに、この収納は下足入れだけにとどまらず、外出時に必要なグッズをしまうスペースとしても活用されています。たとえば、ペットとのお散歩に使うリードやおやつ、子どもの通園バッグや帽子、季節の小物など、日々の暮らしの中で「ちょっとしたもの」をさっと取り出せる場所があることは、非常に便利です。収納の中には、籠やボックスを使ってアイテムごとに仕分けをし、誰が見ても使いやすく、戻しやすい工夫が施されています。
このように、玄関収納は単なる靴箱ではなく、家族の暮らしを支える「出発点」としての役割を果たしています。朝の慌ただしい時間帯でも、必要なものがすぐに見つかり、スムーズに外出できるような動線が整えられているのです。
さて、玄関から視線を移すと、次に目に入るのはトイレ空間です。今回の住まいでは、隣接するユニットバスの広さを確保するために、トイレのスペースをできる限りコンパクトに設計する必要がありました。限られた面積の中で、快適性と機能性を両立させるためには、細部にわたる工夫が求められます。
トイレの壁面には、スリット状の間接照明が仕込まれています。このスリットは、単なる照明の役割だけでなく、トイレットペーパーを置くための隠し収納としても機能しています。生活感が出やすいアイテムを、さりげなく収納できるスペースがあることで、空間全体が洗練された印象になります。間接照明の柔らかな光が壁に陰影を生み出し、狭い空間でも圧迫感を感じさせない工夫が施されています。
トイレ本体は、最新のスマート機能を備えたタイプが採用されており、壁面には操作パネルが設置されています。温水洗浄や脱臭機能、自動開閉など、現代の暮らしに寄り添った機能が充実しており、限られたスペースの中でも快適な使用感を実現しています。
床材には、グレーのタイルが用いられており、清潔感と落ち着きのある雰囲気を醸し出しています。壁面は、一部に濃い色を配することで空間にメリハリを与え、他の面は明るいクリーム色でまとめることで、全体としてバランスの取れた印象に仕上がっています。
このトイレ空間は、ユニットバスとの兼ね合いを考慮しながら、最小限のスペースで最大限の快適性を追求した設計となっています。限られた面積の中でも、使う人の動線や視線、収納の工夫、照明の演出など、細やかな配慮が随所に感じられます。
そして、トイレの扉を開けると、そこから見えるのは、木の温もりを感じさせる収納スペースです。フルミラー付きの引戸が設けられた収納は、空間を広く見せる効果があると同時に、身支度の最終チェックにも役立ちます。収納の中には、籠や布製のボックスが並び、衣類や小物が整然と収められています。こうした収納の工夫は、暮らしの中で「使いやすさ」と「美しさ」を両立させるための大切な要素です。
この住まい全体を通して感じられるのは、「家族の暮らしに寄り添う設計」という思想です。玄関収納からトイレ、そしてその周辺の空間に至るまで、すべてが連続した動線の中で考えられており、使う人の気持ちや行動に自然と馴染むような設計がなされています。
特に、ペットや小さなお子さんがいるご家庭では、日々の動きが多く、物の出し入れや移動が頻繁に行われます。そうした暮らしのリズムに合わせて、収納や動線が柔軟に対応できるように設計されている点は、非常に魅力的です。
また、自然素材の温もりを活かした空間づくりや、間接照明による演出など、感性に訴えるデザインも随所に見られます。単なる機能性だけでなく、そこに住む人の記憶や感情を大切にするような空間設計は、住まいに深みと豊かさをもたらしてくれます。
このように、限られたスペースの中でも、工夫と配慮によって、快適で美しい暮らしが実現できることを、この住まいは教えてくれます。収納ひとつ、照明ひとつにも、使う人の気持ちを汲み取った設計が施されており、そこには設計者の深い共感力と柔軟な発想が感じられます。
住まいとは、単なる箱ではなく、家族の成長や記憶を刻む舞台です。だからこそ、日々の暮らしの中で「ちょっとした使いやすさ」や「さりげない美しさ」が、積み重なって大きな満足感へとつながっていくのだと思います。
この住まいのように、機能と感性がバランスよく織り交ぜられた空間は、家族にとってかけがえのない日常を支える、大切な存在となることでしょう。
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玄関収納の設計ポイント
玄関収納の設計は、住まいの印象や日々の暮らしの快適さに大きく影響を与える重要な要素です。玄関は家族が毎日出入りする場所であり、来客を迎える最初の空間でもあります。そのため、単なる収納スペースとしてではなく、機能性と美しさを兼ね備えた「暮らしのハブ」として設計することが求められます。
1. 収納量と使用頻度のバランスを考える
玄関収納を設計する際、まず考慮すべきは収納量です。家族の人数やライフスタイルによって必要な収納量は異なります。例えば、子どもがいる家庭では、靴の数が多くなるだけでなく、外遊び用の道具やベビーカーなども収納する必要があります。一方で、ペットと暮らしている場合は、散歩グッズやケア用品なども玄関に置くことが多くなります。
しかし、収納量を確保するだけでは不十分です。使用頻度の高いものは取り出しやすい位置に、季節物や使用頻度の低いものは奥や上部に配置するなど、使い勝手を考慮したゾーニングが重要です。収納の奥行きや高さを調整することで、無駄なく空間を活用することができます。
2. 動線設計と回遊性の確保
玄関収納は、動線設計と密接に関係しています。家族が帰宅してから靴を脱ぎ、荷物を置き、コートを掛けるまでの一連の流れがスムーズであることが理想です。特に、雨の日や忙しい朝など、動線が滞るとストレスの原因になります。
そのため、収納の配置は「使う順番」に沿って設計することがポイントです。例えば、靴収納の近くに傘立てやレインコート掛けを設ける、玄関からすぐの位置に鍵やマスクなどの小物を置けるスペースを設けるなど、動線に沿った収納配置が求められます。また、玄関から直接パントリーや洗面室へアクセスできる回遊動線を設けることで、帰宅後の手洗いや荷物の片付けがスムーズになります。
3. 見せる収納と隠す収納の使い分け
玄関は来客の目に触れる場所でもあるため、収納の「見せ方」も重要です。すべてを隠してしまうと無機質な印象になりがちですが、逆にすべてを見せると雑然とした印象を与えてしまいます。そこで、見せる収納と隠す収納をバランスよく使い分けることがポイントになります。
例えば、家族の靴や日用品は扉付きの収納に収めてすっきりと見せ、季節の花やお気に入りの雑貨などはオープン棚に飾ることで、空間に温かみや個性を加えることができます。ペットのリードやお散歩バッグなども、専用のフックやかごを設けることで、機能的でありながら見た目にも美しい収納が可能になります。
4. 素材選びと空間の調和
玄関収納の素材選びも、空間全体の印象を左右する重要な要素です。無垢材や突板などの自然素材を用いることで、温かみのある空間を演出することができます。特に、家族やペットが安心して過ごせる空間づくりを目指す場合、肌触りや香りなど、五感に訴える素材選びが効果的です。
また、床材や壁材との調和も忘れてはなりません。収納の扉の色や質感が周囲のインテリアと調和していることで、空間に統一感が生まれ、玄関全体が洗練された印象になります。さらに、照明の工夫によって収納の陰影を美しく見せたり、間接照明で柔らかな雰囲気を演出することも可能です。
5. 家族の成長に合わせた可変性
玄関収納は、家族の成長やライフスタイルの変化に対応できる柔軟性も求められます。子どもが成長するにつれて靴のサイズが変わったり、学校や習い事の道具が増えたりすることはよくあります。また、ペットの年齢や種類によって必要なグッズも変化します。
そのため、棚の高さを調整できる可動棚や、収納ユニットを追加できる設計にしておくことで、将来的な変化にも対応しやすくなります。さらに、収納の一部を家族ごとの専用スペースにすることで、個々の持ち物を管理しやすくなり、片付けの習慣づけにもつながります。
6. 玄関収納を「記憶の舞台」として捉える
最後に、玄関収納を単なる機能的な空間としてではなく、「家族の記憶を刻む舞台」として捉える視点も大切です。季節ごとの飾りや、子どもの成長を感じる靴のサイズの変化、ペットとの日々の散歩道具など、玄関には日々の暮らしの痕跡が自然と集まります。
そのような記憶を丁寧に収納し、時には見せることで、玄関が家族の物語を語る空間になります。例えば、家族写真を飾るスペースを設けたり、子どもが描いた絵を季節の飾りとともに展示したりすることで、玄関が「生きた舞台」として機能します。
以上のように、玄関収納の設計には多くの要素が絡み合っています。収納量や動線、素材選び、見せ方、そして家族の記憶までを丁寧に織り込むことで、玄関は単なる通過点ではなく、暮らしの質を高める大切な空間となります。
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間接照明がもたらす、トイレ空間の新たな価値
現代の住空間において、トイレは単なる排泄の場ではなく、心身を整えるための「小さな静寂の間」として再定義されつつあります。特に、間接照明を巧みに仕込んだトイレは、機能性だけでなく、感性に訴える豊かな体験を提供してくれます。今回ご提供いただいた写真には、まさにその理想が凝縮されており、洗練されたデザインと光の演出が見事に融合しています。
1.空間の質を高める「光のレイヤー」
間接照明とは、光源を直接見せず、壁や天井などに反射させることで柔らかな光を空間に広げる照明手法です。写真に映るトイレでは、縦型の窓もしくは光パネルが壁面に設けられており、そこから漏れる光が空間全体に穏やかな明るさをもたらしています。このような光のレイヤーは、空間に奥行きと陰影を生み出し、視覚的な広がりを感じさせます。
特に狭小なトイレ空間では、直接照明による強い光が壁面に影を落とし、圧迫感を生むことがあります。対して間接照明は、光が壁や天井をなめるように広がるため、空間がふんわりと包み込まれるような印象を与えます。これは、利用者の心理に安心感と落ち着きをもたらし、トイレというプライベートな空間にふさわしい静けさを演出するのです。
2.素材の質感を引き立てる照明効果
写真のトイレでは、壁面に異なる色調の素材が使われており、明暗のコントラストが空間にリズムを与えています。間接照明は、こうした素材の質感を際立たせる効果があります。たとえば、マットな壁材に光が柔らかく反射することで、表面の微細な凹凸が浮かび上がり、空間に深みが生まれます。
また、床材に使われているライトグレーのタイルも、間接照明によってその清潔感と上品さが際立ちます。直接照明では見落とされがちな素材の表情が、間接照明によって丁寧に引き出されることで、空間全体が「触れたくなるような質感」に包まれるのです。
3.時間帯による表情の変化
間接照明の魅力は、時間帯によって空間の表情が変化する点にもあります。昼間は自然光と調和し、夜間は柔らかな人工光が静けさを強調します。写真のように縦型の窓が設けられている場合、昼は外光が間接照明のように機能し、夜は照明がその役割を担います。
このような「光のバトンタッチ」は、空間に時間の流れを感じさせ、トイレという限られた場所にも季節や時間の移ろいを織り込むことができます。特に、家族の生活リズムに寄り添う住まいづくりを大切にすると、こうした照明の演出は、空間が「生きている舞台」であることを象徴する要素となるでしょう。
4.感情に寄り添う照明設計
トイレは、時に一人きりで思考を巡らせる場所でもあります。忙しい日常の中で、ほんの数分でも静かに呼吸を整えることができる空間は、心の健康にも大きな意味を持ちます。間接照明の柔らかな光は、利用者の心を穏やかにし、緊張をほぐす効果があります。
特に小さなお子さんやペットがいるご家庭では、強い光が不安や興奮を引き起こすこともありますが、間接照明ならばその心配はありません。光が優しく空間を包み込むことで、誰もが安心して過ごせる「やさしい場所」としてのトイレが実現します。
5.デザインと機能の融合
写真に見られるように、壁面にはスマートトイレの操作パネルが設置されており、機能性も十分に備えられています。間接照明は、こうした機器類の存在を過度に主張させず、空間全体に調和させる役割も果たします。光の演出によって、機能が「空間の一部」として自然に溶け込み、使い勝手と美しさが両立するのです。
また、照明の配置によっては、夜間の利用時に眩しさを感じることなく操作が可能となり、視認性と快適性が向上します。これは、高齢者や視力に不安のある方にとっても大きなメリットとなります。
6.空間の記憶を刻む光
「記憶や成長を空間に刻む」という思想において、照明は非常に重要な役割を果たします。間接照明の光は、空間に柔らかな陰影を生み出し、日々の暮らしの断片をそっと包み込みます。たとえば、子どもがトイレトレーニングを始めた日、ペットが初めてトイレに入った瞬間、そんな小さな記憶も、光の演出によって空間に刻まれていくのです。
照明は、目には見えない「空気感」をつくる道具でもあります。その空気感が、家族の記憶と結びつき、空間が単なる機能の場ではなく「思い出の舞台」として存在するようになります。
間接照明を仕込んだトイレは、ただ美しいだけではなく、使う人の心に寄り添い、空間の質を高め、記憶を刻む力を持っています。写真は、そのすべてを静かに語りかけてくるような、完成度の高い空間でした。家族やペットの気持ちに寄り添いながら空間を設計される方にとって、間接照明はまさに「光の共感装置」と言えるでしょう。
この小さな空間に込められた光の工夫が、日々の暮らしにやさしさと深みをもたらしてくれます。








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