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猫と暮らす、やさしい家の物語

  • 執筆者の写真: t-ogino
    t-ogino
  • 18 分前
  • 読了時間: 12分
猫と暮らす家


猫の居場所も、家の中の色々な場所にあります。

猫穴から覗いている、猫ちゃん。



猫と暮らす、やさしい家の物語


リビングの片隅、グレーの壁にぽっかりと開いた小さなアーチ型の穴。その奥から、まんまるの瞳がこちらをじっと見つめている。猫穴から覗いているのは、家族の一員である猫ちゃん。まるでこの家の小さな番人のように、静かに、でも確かな存在感を放っている。

この猫穴は、ただの飾りではない。猫のために設計された、専用の居場所。人の動線とは少し離れた場所にありながら、家族の気配を感じられる絶妙な位置にある。猫にとっての「安心」と「好奇心」が両立する場所だ。


猫の居場所は、家のあちこちに

この家には、猫の居場所がひとつではない。猫穴のほかにも、窓辺の低い棚、階段の踊り場、キッチン横の小さなベンチ、そして寝室の隅に置かれた柔らかなクッション。どれも猫が自分の気分に合わせて選べる「居場所」だ。


猫は気まぐれで繊細な生き物。日によって、時間によって、気温や光の加減によって、居心地の良い場所は変わる。だからこそ、この家では「猫が選べる空間」を大切にしている。人が猫に合わせるのではなく、猫が自分の感覚で居場所を選べるように、家の中にいくつもの選択肢を用意しているのだ。


たとえば、朝の光が差し込む窓辺は、猫にとって最高のひなたぼっこスポット。午後になると、少し涼しい廊下の隅に移動して、床にぺたりと寝そべる。夜になると、家族が集まるリビングのソファの背もたれに乗って、みんなの様子を眺める。そんなふうに、猫は家の中を旅するように過ごしている。


素材と設計に込めた思いやり

この家の設計には、猫と人が自然に交差するような工夫が随所に施されている。床材は滑りにくく、爪が引っかかりにくい無垢材を使用。壁の一部には、猫が爪を研いでも傷が目立ちにくい珪藻土が塗られている。家具の角は丸く、猫がぶつかっても安全。高低差のある棚やステップは、猫が自由に上下運動できるように配置されている。


そして何より、この家には「境界」がない。人と猫の空間が、ゆるやかに繋がっている。猫穴のような小さな開口部は、猫が人の気配を感じながらも、自分だけの時間を過ごせる場所。人の視線から少し外れた場所にあることで、猫にとっての「隠れ家」として機能する。

このような設計は、単なる機能性だけでなく、感情の交差点を意識している。猫が安心して過ごせることは、家族にとっても安心につながる。猫がリラックスしている姿を見るだけで、家族の心もほぐれていく。そんな相互作用が、この家には息づいている。


暮らしの舞台としての住まい

この家は、ただの「住む場所」ではない。家族と猫が共に過ごし、記憶を刻み、成長していく「舞台」だ。猫穴から覗く猫の姿は、その舞台の一場面。家族がテレビを見て笑っているときも、誰かがひとりで読書しているときも、猫はそっとその場にいる。ときには主役として、ときには背景として。


猫の存在は、家族の暮らしにリズムを与える。朝、猫が窓辺で伸びをする姿に目を覚まし、夜、猫が膝の上で丸くなることで一日の終わりを感じる。そんな小さな瞬間が積み重なって、家族の記憶になる。

そして、猫の居場所が家の中に点在していることで、家族もまた「空間の豊かさ」を感じるようになる。猫がどこにいるかを探すことで、家の隅々に目を向けるようになる。猫が選んだ場所に、家族も自然と寄り添うようになる。そうして、家の中に「気配の交差点」が生まれる。


猫穴の向こうにある世界

猫穴から覗いている猫ちゃんは、ただ外を見ているだけではない。その視線の先には、家族の暮らしがある。笑い声、足音、料理の匂い、テレビの音。すべてが猫にとっての「世界」だ。


そして猫穴は、猫にとっての「窓」でもある。外の世界ではなく、家族の世界を覗く窓。猫はその窓から、今日の空気を感じ取り、安心を確認し、時には好奇心をくすぐられる。猫穴の奥にいる猫ちゃんは、静かに、でも確かにこの家の一部として存在している。

このような空間は、設計者の感性と家族の思いやりが融合した結果だ。猫の居場所を「点」ではなく「線」として捉え、家全体に散りばめることで、猫と人が自然に交差する暮らしが生まれる。猫穴はその象徴であり、家族の暮らしの中に溶け込んだ「やさしさのかたち」なのだ。


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猫と暮らす家の設計ポイント:共生するための空間デザイン

猫と暮らすということは、単にペットを飼うこと以上の意味を持ちます。彼らは家族の一員であり、空間の中で自由に動き、時に人と交差し、時に自分だけの静けさを求める存在です。そんな猫たちと人がともに快適に暮らすためには、設計段階から「共生」という視点を持つことが重要です。


1. 猫の行動特性を理解した動線設計

猫は高いところを好み、狭い隙間に入り込み、静かな場所で休み、突然走り出すこともあります。こうした特性を空間設計に取り入れることで、猫にとっても人にとってもストレスの少ない住まいが実現します。


• 上下動線の確保:キャットウォークやステップを壁面に設けることで、猫が上下に移動できるルートを作ります。特にリビングや廊下など人の動線と交差する場所に設けると、猫が人を観察しながら安心して過ごせます。


• 回遊性のある間取り:猫は同じルートを繰り返し歩くことを好みます。部屋と部屋を回遊できるような動線設計は、猫の運動不足を防ぎ、ストレス軽減にもつながります。


• 隠れ家の配置:収納の一部や家具の下などに猫が安心して隠れられるスペースを設けることで、来客時や不安なときに逃げ込める場所が確保されます。


2. 素材選びと仕上げの工夫

猫との暮らしでは、素材の耐久性や安全性、そしてメンテナンス性が重要になります。加えて、猫の爪とぎや毛の抜け落ちなど、日常的な行動に配慮した素材選びが求められます。


• 床材の選定:滑りにくく、傷がつきにくい素材が理想です。無垢材やコルク、塩ビタイルなどは猫の足腰に優しく、爪による傷も目立ちにくいです。


• 壁面の工夫:爪とぎ対策として、腰壁にタイルや木材を貼る、あるいは爪とぎ専用のパネルを設置することで、壁の損傷を防ぎつつ猫の習性を受け入れることができます。


• ファブリックの選び方:ソファやカーテンなどは、毛が絡みにくく、洗濯しやすい素材を選ぶと清潔に保ちやすくなります。撥水性のある布地や、毛が目立ちにくい色味もおすすめです。


3. 安全性への配慮

猫は好奇心旺盛で、思いがけない行動をとることがあります。設計段階で安全性を確保することは、事故を未然に防ぐために欠かせません。


• 窓とバルコニーの対策:高所からの転落を防ぐため、窓には網戸の補強や転落防止柵を設けることが重要です。バルコニーには猫が通れない高さのフェンスや、隙間のない手すりを採用しましょう。


• キッチンの工夫:火や刃物など危険が多いキッチンは、猫が入り込めないように扉付きにするか、カウンターの高さを工夫して猫が飛び乗りにくくする設計が有効です。


• 電気コードや小物の管理:コード類はカバーで保護し、誤飲の可能性がある小物は収納するなど、猫の目線で危険を排除する工夫が必要です。


4. 猫の情緒を満たす空間演出

猫は静けさや陽だまりを好み、外の景色を眺めることも好きです。彼らの情緒を満たす空間を設けることで、より豊かな暮らしが生まれます。


• 窓辺の居場所:出窓や窓際にベンチを設けることで、猫が外を眺めながら日向ぼっこできるスペースになります。季節の移ろいや鳥の動きなど、猫にとって刺激となる要素が詰まっています。


• 静かな寝床の確保:人の動線から少し外れた場所に、柔らかい素材で囲まれた寝床を設けると、猫が安心して眠れる空間になります。収納の一部を猫用スペースにするのもおすすめです。


• 香りと音への配慮:猫は嗅覚と聴覚が敏感です。芳香剤や強い音はストレスの原因になるため、自然素材の香りや静かな環境を意識した設計が望ましいです。


5. 人と猫が交差する「舞台」としての空間

猫と人がそれぞれの時間を過ごしながらも、ふとした瞬間に交差する場所があると、暮らしに豊かな物語が生まれます。設計者としては、そうした「交差点」を意図的に設けることが重要です。


• リビングの中心にキャットステップ:人がくつろぐ場所に猫の動線を交差させることで、自然なふれあいが生まれます。猫が高い場所から人を見下ろすことで安心感を得ることもあります。


• 階段や廊下の共有:人と猫がすれ違う場所に、猫専用の通路やステップを設けることで、日常の中にさりげない交流が生まれます。


• 食事スペースの分離と近接:猫の食事スペースは人の食卓から少し離れた場所に設けつつ、視線が届く距離にすることで、互いの存在を感じながら過ごせます。


6. 成長と変化に対応する柔軟な設計

猫も人も年齢を重ね、ライフスタイルが変化していきます。設計には、そうした変化に対応できる柔軟性が求められます


• 可変性のある家具配置:キャットタワーやステップを移動可能にすることで、猫の年齢や体調に合わせて空間を調整できます。


• 多用途スペースの活用:収納や小上がりなどを猫の遊び場や寝床として活用することで、空間の使い方に幅が生まれます。


• 老猫への配慮:段差を減らし、床材を柔らかくするなど、加齢による身体の変化に対応した設計も重要です。


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キャットウォーク・キャットステップの設計方法

猫の動線と空間美


猫は高い場所を好み、上下運動を通じてストレスを発散し、安心できる居場所を見つけます。そんな猫の本能に寄り添いながら、住空間の美しさと機能性を両立させるのが、キャットウォークとキャットステップの設計です。単なる棚や足場ではなく、猫と人が共に暮らす「舞台装置」としての設計を目指しましょう。


1. 設計の目的と空間の捉え方

①猫の行動特性を理解する

猫は「高所志向」「隠れたがり」「回遊性」の3つの習性を持っています。高い場所に登ることで安心感を得たり、狭い場所に身を隠して落ち着いたり、家の中を巡回するように移動することで縄張りを確認します。これらの行動を空間にどう落とし込むかが設計の出発点です。


②空間の役割を再定義する

キャットウォークは壁や天井の余白を活かすことで、既存の生活動線を邪魔せずに猫の動線を追加できます。キャットステップは垂直移動の補助として、家具や建具と連携させることで、インテリアの一部として自然に溶け込ませることが可能です。


2. 設計寸法と構成の基本

①ステップのサイズと間隔

• 幅:250〜300mm(猫がすれ違えるサイズ)

• 奥行:180〜250mm(着地の安定性を確保)

• 高さ(段差):200〜300mm(ジャンプしやすく、負担が少ない)


老猫や運動が苦手な猫には、段差を200mm以下に抑えると安心です。ステップ間の水平距離は250mm以下が理想で、ジャンプの負担を軽減できます。


②ウォークの高さと長さ

• 高さ:人の視線より少し上(掃除やメンテナンスが可能な範囲)

• 長さ:直線距離は最大3m以下(猫が全力疾走しすぎないように)

途中にクランク(折れ曲がり)やボックス(滞在スペース)を設けることで、動線に変化をつけ、猫の興奮を抑えつつ安全性を高めます。


3. 素材選びと構造設計

①素材の選定

• 木材:ファルカタ集成材、パイン材など軽量で加工しやすいもの

• 表面仕上げ:滑り止めマット、カーペット、麻縄などを貼ると安心

• 塗装:自然塗料や水性塗料で安全性を確保


猫の爪が引っかかりやすく、滑りにくい素材を選ぶことで、転落リスクを減らします。また、木材の角はサンドペーパーで丸めておくと安全です。


②構造の工夫

• 棚受け金具:L字型の棚受けを使用し、耐荷重15kg以上を目安に設計

• 壁の下地確認:石膏ボードにはアンカーを使用し、柱や合板に固定する

• 吊り構造:天井から吊るす場合は、梁の位置を確認し、チェーンやワイヤーで強度を確保


猫がジャンプする際には、体重の数倍の衝撃が加わるため、構造的な強度は最重要項目です。


4. 動線設計と空間の演出

①回遊性の確保

キャットウォークは一方通行ではなく、ループ状や分岐のある設計にすることで、猫が自由に移動できるようになります。出入口は最低2箇所以上設け、行き止まりを避けましょう。


②隠れ家の設置

猫は時に人目を避けて休みたがるため、ウォークの途中に「隠れ箱」や「顔出し窓付きボックス」を設けると、安心できる居場所になります。このような空間は、猫の心理的安全性を高めるだけでなく、インテリアとしても魅力的です。


③人との視線の交差

猫がウォーク上から人を見下ろす位置にいることで、互いの存在を感じながらも干渉しすぎない距離感が生まれます。これは、猫との共生空間における「視線設計」の妙です。


5. メンテナンス性と安全対策

①掃除のしやすさ

猫は高い場所でも嘔吐や抜け毛を残すことがあるため、ウォークは手が届く高さに設置し、掃除がしやすい構造にしておきましょう。


②脱走防止

窓際に設置する場合は、網戸の補強や転落防止柵の設置が必要です。特に賃貸住宅では、突っ張り式の柱やLABRICOなどを活用し、壁に傷をつけずに安全対策を施すことが可能です。


6. インテリアとの調和

キャットウォークやステップは、空間のアクセントとしても機能します。色味や素材を部屋のトーンに合わせることで、違和感なく溶け込みます。例えば、ナチュラルな木目調は北欧風のインテリアに、黒やグレーの塗装はモダンな空間にマッチします。

また、ステップを飾り棚として兼用することで、猫の動線と人の生活が交差する「共生の美学」が生まれます。


7. 実例から学ぶ設計の工夫

東京都品川区の集合住宅では、斜め天井に沿ってキャットウォークを設置し、猫専用の高所空間を創出しました。人の生活空間とは別に、猫が自由に移動できる「空中の回廊」が設けられ、猫たちは見下ろす位置から家族を観察するようになりました。

このような設計は、猫の習性を尊重しながら、空間に物語性を与える好例です。


8. 設計のまとめ:猫と人の共生を形にする

キャットウォークとキャットステップの設計は、猫の生態と人の暮らしを融合させる空間創造です。安全性・機能性・美しさを兼ね備えた設計は、猫にとっての「遊び場」であり、人にとっての「癒しの風景」となります。

設計においては、猫の年齢や性格、家族構成、空間の使い方などを丁寧に読み解きながら、柔軟に構成を変化させることが大切です。猫の成長に合わせてステップの高さを変えたり、ウォークの延長を加えたりすることです。







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