受賞しました!第20回キッズデザイン賞「子と猫の家」マンションリノベーション
- t-ogino
- 2 日前
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設計監理し、昨春完成した「子と猫の家」が、「キッズデザイン賞」を受賞しました。
この様な、設計機会をいただいた施主さんには、感謝の気持ちしかありません。設計中も工事中も、とにかく楽しかった仕事ですが、特に設計過程では施主とコラボレーションする様に、アイデアをブラッシュアップさせながら設計を進めて行ったプロジェクトですので、施主さんのおかげですし、喜びもひとしおだったりします。
「キッズデザイン賞とは何?」
キッズデザイン賞とは、「子どもたちが安全に暮らす」「子どもたちが感性や創造性豊かに育つ」「子どもを産み育てやすい社会を創る」という3つのデザインミッションを満たす製品や空間、サービスに与えられる賞です。
住宅においては、「自分たちのライフスタイルや好きなデザインの中で暮らしたい」想いと「子供の成長を助け子が楽しく暮らせ、子育てのしやすさや安全性にも配慮されている住まい」に与えられる賞です。
キッズデザイン賞に応募するにあたって、子と猫の家の特徴をいくつかに分けて説明しました。

~家全体が子と猫の遊び場~
家全体を子の猫の遊び場とする事で、暮らしながら成長し学ぶ空間としてのマンションリノベーションです。マンションという規模が制約されたスペースに、子供回遊動線・立体的な上段ベット・小上がり・トンネルという遊具空間と、猫が移動し遊ぶ動線がからまり、遊び創造・空間認知・猫異種共生という創造性を育む場です。
~遊び場のないマンション→遊具の様な家~
都市部マンションは庭があり、外の遊び場が近接している訳でもない。子供の暮らしはスペースが限定され、閉鎖的な空間での暮らしにならざる得ない。その小さな空間で、時間の限られた共働き夫婦が、情緒ゆたかに子供を育てる場として、家全体を遊び場として思う存分遊び、創造性や認知能力を高める場としたいと、リノベーションを行った。
~猫という他者と出会う場~
猫と子の遊び動線がからまることで、動く場所・行動原理が異なる他者との暮らしが、学びにつながると考えた。
~子だけの回遊~
家全体を遊び場とする。トンネルをつくり、家の中に子供だけの回遊動線ができ、グルグル走り回る場になる。
~立体的な遊び場~
小上がり→上段ベットの立体的な空間は、遊具(ジャングルジム)の様に上下に移動しながら遊び、自発的に動きたくなる場としている。上る梯子の強度を上げ、小上がりは飛び降りてもケガしづらい、クッション性のある畳とした。
~子と猫のからまり~
猫動線の小さなアーチ開口をそこここにつくり、子と猫の動線が立体的にからまり出会いをつくる。子供が猫の開口から落ちない大きさとした。
~自発的・創造的な遊び~
トンネルをグルグル走り回りベットの昇り降りを楽しむ毎日であるが、トンネルを椅子でふさぎ仮の子供パーソナルスペースにしたり、上下の高低差をつかう遊びを生み出すなど自発的な遊びの創造をしている。

~用途を兼ねる~
面積約60㎡、天井高さ2.3mの小さな空間に収納・寝る・遊ぶ
働くなどの用途を重ねる事で、家全体を遊び場にしながら効率的な生活空間をつくっている。
~成長を見守る~
家族の寝室でもある小上がりから、子供の一人寝を教えている上段ベットを見守っている。
〜家族が安全に、健やかに暮らせること〜
クッション性のある畳。落下しない強度のハシゴと、上段ベットの手すり。家全体が遊び場になる設計だからこそ、安全性には最大限の配慮をしている。
「賞をとる目的で、設計をしていない」
実は、賞(アワード)に応募するのは、苦手です。デザインの賞に応募するには、明確なコンセプトを打ち出し、そのコンセプト沿った設計をし、その内容だけをプレゼンテーションとして表現する必要があります。ところが、実際の設計の現場では、コンセプトだけでなく、ありとあらゆる状況、コスト、自然、ライフスタイル、素材、性能、施主と場の個性、施工性などを複合的に考慮しながら設計を進めて行きます。そもそも設計中は賞に出そうなどとは、全く思っておらず、施主のために何ができるかを一生懸命考える毎日です。完成した後に初めて、これは賞応募できる建築かも?と気づきます。
先程も言いましたが、設計中はありとあらゆる事を考慮して設計をしています。完成した後もそのありとあらゆる要素、工夫した事、苦労した部分は、全て等価に大事な部分として記憶されます。ただ、賞(アワード)の審査員からしたら、あっちも、こっちも、向こうも総花的にプレゼンテーションされても、結局何が言いたいの?コンセプトがどこにあるかわからない。結果、何をどう評価して良いかわからないとなります。
賞(アワード)のプレゼンテーションでは、無数にある魅力、考え、大事にしたモノの一部を切り取って、表現しないと審査員には伝わりません。全てを大事に考えてしまう私にとって、苦手な部分です。
今回のキッズデザイン賞では、コンセプトを絞って訴求する事が、珍しく上手く出来た為、受賞に繋がりました。
「子と猫が一緒に暮らすことでの、学びと成長」→「学びと成長を楽しく促す設計の工夫」という訴求が、プレゼンテーションの根底に決めました。

「建築の賞とキッズデザイン賞の違いと意義」
建築やインテリアにも複数の賞がありますが、キッズデザイン賞は少し毛色が違います。まず、キッズデザイン賞は子供に関する全てのデザインに対する賞で、建築に閉じた賞ではありません。そして建築の賞が、建築そのものの美しさや新規性を問う「モノの完成度」に与えられる賞であるのに対し、キッズデザイン賞は、子どもと、子どもを育てる大人の課題を、デザインの力でどう解決しているか。「コトの体験」を評価する賞で、よりユーザーの暮らしや、価値観、生き方に結びつくコトに賞を与えています。
1. 従来の「建築の賞」が持つ評価軸と性質
一般的に「建築の賞」と呼ばれるものは、建築物を「文化的・社会的・芸術的な所産」として捉え、総合的な完成度や革新性を評価する傾向にあります。
① 空間の美学と意匠的完成度
形態の美しさ、素材の選定、光と影の操り方、プロポーションなど、空間そのものが持つ芸術性やデザインの洗練度が問われます。日本の伝統的な要素(例えば障子や欄間など)を現代的にどう昇華させているか、といった美学的なアプローチも高く評価されます。
② 構造・技術的革新と環境への配慮
新しい構造形式への挑戦、未利用素材の活用、あるいはパッシブデザインによるゼロエネルギー化など、建築技術の進歩に貢献するアプローチが評価されます。周辺環境や地域社会の文脈(コンテクスト)をどう読み解き、景観としてどう調和・対比させているかという点も重要視されます。
③ 建築史・タイポロジーへの貢献
これまでの「住宅」「学校」「オフィス」といったビルディングタイプ(建築用途)の概念を覆すような、新しい平面計画やプログラムの提案が含まれているかどうかが問われます。
これらの賞を受賞することは、主に「建築業界内における専門的な評価の獲得」を意味します。同業者や批評家からの客観的な評価は、建築家としての高い技術力と作家性を証明するものです。

2. 「キッズデザイン賞」の独自性と評価の視点
一方で、「キッズデザイン賞」は、建築物そのものの芸術性や革新性を第一義とするのではなく、「特定のユーザー(子どもと、子どもを育てる大人)の課題を、デザインの力でどう解決しているか」という極めて明確な目的意識に基づいています。
キッズデザイン賞には、以下の3つの明確な理念(評価基準)があります。
① 子どもたちが安全に暮らす、一般に育つデザイン
住空間における怪我や事故(転落、指挟み、火傷、シックハウスなど)を未然に防ぐ工夫がなされているか。単に「危険なものを排除する」だけでなく、子どもが自ら危険を察知し、安全に行動できるような環境づくり(リスク・マネジメントへの配慮)も含まれます。
② 子どもたちの創造性と未来を拓くデザイン
空間が子どもの感性や知的好奇心をどう刺激するか。例えば、回遊性のある動線が遊びを生み出す、素材の経年変化(無垢材の床や塗り壁など)に触れることで豊かな感性が育まれる、家族の気配を感じながらも独立して集中できる居場所がある、といった「成長を促す空間装置」としての役割です。
③ 子どもを産み育てやすいデザイン
これは子ども本人だけでなく「親(養育者)」に向けた視点です。キッチンからリビングやスタディコーナーへの死角のない視線計画、家事動線の徹底的な効率化によって生まれる「心のゆとり」、ベビーカーの収納や来客対応をスムーズにする土間空間など、育児の心理的・肉体的負担を軽減する空間設計が評価されます。
3. 両者の決定的な違い:「モノの完成度」か「コトの体験」か
一般的な建築の賞とキッズデザイン賞の最大の違いは、「誰の視点に立って評価するか」にあります。
建築の賞: 評価の主眼は「建築物(モノ)と社会・環境との関係性」にあります。審査するのは建築の専門家であり、普遍的な美しさや社会的意義、建築としての強度が問われます。
キッズデザイン賞: 評価の主眼は「空間を通じた体験(コト)と特定のライフステージにある人との関係性」にあります。人間工学、児童心理学、小児医学などの専門家も審査に加わり、「その空間が、子どもと家族の日常をどう豊かにし、どう守るか」という徹底したユーザー目線が問われます。

建築の賞が「この建築はいかに素晴らしいか(How great this architecture is)」を問うのに対し、キッズデザイン賞は「この空間は家族のために何ができるか(What this space can do for families)」を問うていると言えます。
従来の「建築の賞」が、設計者の「プロフェッショナルとしての技術と芸術性の高さ」を社会に証明するものあるならば、「キッズデザイン賞」は、設計者の「住まう人への深い愛情と、生活の解像度の高さ」を証明するものであると言えます。
住空間においてこの両者の視点を持つことは、決して相反するものではなく、洗練された美しい空間(建築的価値)の中に、子どもが安全に駆け回り、親が心穏やかに見守ることができる緻密な機能(キッズデザイン的価値)が内包されている住宅こそが、現代的で質高い住環境です。


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