「在宅ホスピス」とも言われる、「看護小規模多機能型居宅介護施設」、通称「かんたき」の設計を、去年・今年と行って来ました。
六角形独創的な建物です。
看護師さんが行う、訪問看護ステーションをいくつか運営して来た法人さんが、拠点施設として、この「かんたき」を運営します。「かんたき」は、在宅の方を訪問して看護する訪問看護ステーションを持ち、通所デイサービスが有り、そこで生活する入居室が9室有る、文字通り、小規模ながら多機能な介護施設です。
重度の方の看護を積極的に引く受けて来た、法人さんでその姿勢には、頭が下がります。(重度の障害の方は、以外と引き受けてもらえない事も実は多いんですよ)
設計を私に任せてくれた理由は2つ。
1つは、光を取り入れた建築の設計をしている事。
2つ目は、木の扱いが上手い事。
この建築は、「美しい光」が、降り注ぐ、「木の建物」になります。
光の扱いは以外と難しく、やたらめったら光を入れると、眩しく.暑い、ギラギラした室内になってしまいます。
その辺りが設計者の腕の見せどころ。
入居者もスタッフも皆が、快適な時間と空間を過ごせる建築を設計したつもりです。
工事も始まりました。
完成が楽しみです。
看護小規模多機能型居宅介護施設とは
看護小規模多機能型居宅介護施設(かんごしょうきぼたきのうがたきょたくかいごしせつ)は、日本の介護保険制度に基づくサービスの一つです。この施設は、以下の特徴があります:
多機能性:居宅(自宅)での生活支援、通所(デイサービス)、訪問看護、短期入所(ショートステイ)など、さまざまな介護サービスを一つの施設で提供します。利用者のニーズに応じて、柔軟にサービスを組み合わせることができます。
小規模:施設の規模が比較的小さく、通常は20人未満の利用者を対象としています。これにより、より個別的で家庭的なケアが提供されることが特徴です。
看護の提供:施設には看護師が常駐し、医療的なケアが必要な利用者に対しても対応が可能です。健康管理や投薬、リハビリテーションなど、医療面でもサポートが行われます。
在宅支援:利用者が可能な限り自宅での生活を続けられるように支援します。必要に応じて、訪問介護や訪問看護などのサービスを通じて、在宅での生活をサポートします。
この施設の目的は、利用者が自宅に近い環境で安心して生活できるようにし、また、必要に応じて柔軟に対応することで、より質の高い介護を提供することです。
介護施設の建築設計
介護施設の建築設計は、利用者の安全性、快適性、そして介護スタッフの効率的な作業を考慮して行う必要があります。以下は、介護施設の建築設計における主要な要素です:
1. バリアフリー設計
車椅子対応: 廊下やドアの幅を広くし、車椅子が通れるようにします。スロープやエレベーターも必須です。
手すりや安全バー: トイレや浴室、廊下などに取り付け、利用者が自立して移動できるようにします。
床材: 滑りにくい素材を使用し、転倒リスクを減らします。
2. 居住空間の設計
個室: プライバシーを保つための個室を用意し、利用者がリラックスできる空間を提供します。個室には、必要な設備(ベッド、収納、照明)を適切に配置します。
共有スペース: 食堂、リビングルーム、庭など、利用者が社交的に過ごせる共有スペースも重要です。これらの空間は、明るく、開放感のあるデザインが望ましいです。
3. 介護スタッフの作業効率
動線設計: スタッフが効率よく移動できるように、動線を計画します。特に、ケアが必要な利用者へのアクセスを考慮したレイアウトが必要です。
医療設備の配置: 看護ステーションや医療機器を効率よく配置し、必要なときに迅速にアクセスできるようにします。
4. 安全性とセキュリティ
緊急呼び出しシステム: 各居室や共有スペースに緊急呼び出しボタンを設置し、迅速な対応が可能です。
防火対策: 消火器、煙探知機、避難経路の表示など、防火対策を徹底します。
5. 環境と快適性
自然光: 自然光を取り入れることで、利用者の精神的な健康を保つことができます。大きな窓や光を取り入れる設計が推奨されます。
通風と温度管理: 空調設備や換気システムを整備し、快適な室内環境を保ちます。
6. 地域との調和
外観デザイン: 周囲の環境に溶け込むような外観をデザインし、地域の景観に配慮します。
庭や屋外スペース: 利用者が屋外で過ごせるように、庭やテラスを設けることも考慮します。
これらの要素を総合的に考え、利用者が快適で安全に過ごせる環境を作ることが、介護施設の建築設計において最も重要なポイントです。
光と木が美しい建築の設計方法
光と木を活用した美しい建築設計は、自然の温かさと明るさを取り入れた心地よい空間を創り出します。以下は、光と木を美しく組み合わせるための設計方法です:
1. 自然光の取り入れ方
大きな窓と開口部: 自然光を最大限に取り入れるために、大きな窓やガラスの開口部を設けます。特に南向きの窓は、日中の自然光を効率的に取り入れるのに有効です。
天窓: 天窓を設けることで、屋根から直接自然光を取り入れ、室内の明るさを確保します。特に部屋の中心部などに設置することで、均一な光の分布が可能です。
光の導入: 光を空間の奥深くまで届けるために、光を反射させる鏡や明るい色の壁材を使用します。
2. 木材の使い方
内装に木を使う: 壁や床、天井に木材を使用することで、自然な温かみと質感を持つ空間を作り出します。木材の種類や仕上げに応じて、異なる雰囲気を演出できます。
木のアクセント: 木の梁や柱、家具などをアクセントとして使用し、建物のデザインに自然な要素を加えます。これにより、空間にリズムと深みを持たせることができます。
木の通気性: 木材は呼吸する素材であり、湿度調整にも優れているため、室内環境を快適に保つことができます。
3. デザインの調和
自然との融合: 建物が周囲の自然と調和するように、木材と光を使ったデザインを考えます。例えば、木の外壁や庭との連続性を持たせることで、自然な流れを作り出します。
光の変化を楽しむ: 一日の時間や季節によって変化する光の具合を楽しめるように、光の入り方や反射を意識した設計を行います。例えば、夕方の柔らかな光が差し込むような設計を考慮します。
4. 木の仕上げとメンテナンス
適切な仕上げ: 木材の表面仕上げには、耐久性と美観を兼ね備えた塗装やオイル仕上げを選ぶと良いでしょう。これにより、木材の質感を保ちながら、長期間の使用にも耐えることができます。
メンテナンス: 木材は定期的なメンテナンスが必要です。適切なケアを行うことで、木材の美しさを長く保つことができます。
5. エコロジーとサステナビリティ
再生可能素材: 環境に優しい素材として再生可能な木材を使用することで、サステナブルな建築を実現します。FSC認証の木材など、持続可能な資源からの材料を選ぶと良いでしょう。
エネルギー効率: 自然光を効果的に取り入れることで、人工照明の使用を減らし、エネルギー効率を高めます。断熱性の高い木材やガラスを使用することで、エネルギー消費の削減にも寄与します。
6. デザインの意図
感覚的な体験: 光と木を組み合わせることで、利用者に感覚的な体験を提供します。木の質感や光の変化を感じることで、リラックスしたり、落ち着いたりする空間を作り出します。
機能と美しさ: 光と木のデザインは、機能性と美しさのバランスを保ちながら、利用者の快適さを追求します。デザインの意図を明確にし、それに基づいた選択と調整を行うことが大切です。
これらの要素を考慮して設計を行うことで、光と木が調和した美しい建築空間を実現することができます。
光が美しく入る介護施設
光が美しく入る介護施設の設計は、利用者の健康や快適性を向上させる重要な要素です。自然光を効果的に取り入れることで、施設の環境を明るくし、精神的な安らぎを提供することができます。以下は、光が美しく入る介護施設を設計する際のポイントです:
1. 自然光の取り入れ方
大きな窓とガラスの開口部: 南向きの大きな窓やガラスの開口部を設け、最大限に自然光を取り入れるようにします。これにより、施設内が明るくなり、利用者の気分も向上します。
天窓: 天窓を利用して、屋根から直接光を取り入れることで、室内全体に均等に自然光を分配します。特に中央部分や内部の部屋などに効果的です。
光の通り道: 施設内で光が通るような設計をし、暗い部分ができないように工夫します。例えば、ガラスの壁や仕切りを使用して光を拡散させる方法があります。
2. 光の調整
調光システム: 照明の明るさを調節できるシステムを設け、時間帯や利用者の活動に応じて最適な光の量を提供します。これにより、日中は自然光を活用し、夜間は人工照明で適切な明るさを保つことができます。
カーテンやブラインド: 窓にカーテンやブラインドを設置し、光の量を調整できるようにします。これにより、利用者が自分の好みに合わせて光の量を調整できます。
3. 光と視覚的な快適性
色温度と光の質: 照明の色温度(暖色系や寒色系)を選び、利用者にとって快適な環境を作ります。暖かい色温度の光はリラックスを促進し、寒色系の光は集中力を高めるとされています。
反射と拡散: 光を柔らかくするために、反射材や拡散材を使用して、直射光を和らげます。これにより、目に優しく、リラックスできる空間を提供します。
4. 自然とのつながり
外部の景観: 窓から見える外部の景観を活かし、利用者が自然と触れ合えるようにします。例えば、庭や公園を眺められるように窓を配置することが考えられます。
屋外スペース: 利用者が自然光を浴びながらリラックスできる屋外スペースやテラスを設けます。これにより、外の光と自然を感じることができ、精神的なリフレッシュが可能です。
5. 設計の工夫
ゾーニング: 利用者の活動に応じて、光の取り入れ方を工夫したゾーニングを行います。例えば、リラックスできるエリアには自然光を多く取り入れ、活動的なエリアには均等に光を分散させる設計をします。
インテリアデザイン: 内装には、光を反射しやすい明るい色の壁や床材を使用することで、光を効率的に拡散させます。また、鏡や光を反射するアクセサリーを使って、光の効果を高めます。
6. 光の持続性と効率
エネルギー効率: 自然光を取り入れることで、人工照明の使用を減らし、エネルギー効率を高めます。また、高効率なLED照明を使用することで、エネルギーの節約にも寄与します。
メンテナンス: 窓や天窓の清掃を定期的に行い、自然光の取り入れ方を維持します。汚れや障害物が光の通り道を妨げないようにします。
これらの要素を考慮して設計を行うことで、自然光を最大限に活用した美しい介護施設を実現し、利用者の快適さや健康を向上させることができます。
介護施設での建築設計する上での注意点
介護施設の建築設計においては、利用者の安全と快適性を最優先に考えながら、以下の注意点を考慮することが重要です:
1. 利用者のニーズを把握する
年齢と身体的状態: 利用者の年齢層や身体的な状態(例えば、認知症の有無や移動能力)を考慮し、それに適した設計を行います。
個別のニーズ: 利用者の個別のニーズや好みに応じた空間を提供できるように、調査やヒアリングを行います。
2. 安全性の確保
滑りにくい床材: 床材は滑りにくい素材を選び、転倒事故を防ぎます。特に浴室やトイレには注意が必要です。
手すりの設置: 重要な場所(廊下、トイレ、浴室など)には手すりを設置し、利用者の移動をサポートします。
緊急対応: 緊急時に迅速に対応できるように、緊急呼び出しシステムや防火設備を整備します。
3. バリアフリー設計
広い通路とドア: 車椅子や歩行器の利用者がスムーズに移動できるように、通路やドアの幅を十分に取ります。
スロープとエレベーター: 階段の代わりにスロープやエレベーターを設置し、全てのエリアにアクセスできるようにします。
4. 快適な居住空間の設計
プライバシーの確保: 個室の設計には、利用者がリラックスできるようプライバシーを保つための工夫が必要です。
自然光と換気: 自然光を取り入れ、適切な換気を行うことで、快適な居住環境を提供します。
5. 介護スタッフの作業効率
作業動線の最適化: スタッフの動線を最適化し、効率的に作業できるようにします。例えば、ケアが必要な利用者の部屋をまとめるなどの工夫が考えられます。
介護機器の配置: 医療機器や介護用具の配置を工夫し、必要なときに迅速に利用できるようにします。
6. 衛生管理
清掃しやすい設計: 床材や壁材は清掃が容易で、衛生管理がしやすいものを選びます。
排水設備: 浴室やトイレには適切な排水設備を整え、衛生状態を保ちます。
7. 地域との調和
外観デザイン: 施設の外観が周囲の環境に調和するようにデザインします。地域住民との関係も大切にし、地域に溶け込む施設を目指します。
アウトドアスペース: 庭やテラスなどの屋外スペースを設け、利用者が自然と触れ合える環境を提供します。
8. 法令と規制の遵守
建築基準法: 建築基準法や消防法など、関連する法令や規制を遵守し、安全な施設を設計します。
介護保険制度: 介護保険制度に基づく要件やガイドラインを確認し、必要な基準を満たす設計を行います。
これらの注意点をしっかりと考慮し、利用者の安全と快適性を最大限に高める設計を心がけることが、介護施設の成功につながります。
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