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茶碗と建築の関係・類似性・長次郎の幾何学茶碗と安藤忠雄

  • 執筆者の写真: t-ogino
    t-ogino
  • 2017年5月30日
  • 読了時間: 5分

更新日:2024年8月25日


長次郎の黒茶碗

長次郎の茶碗に「むき栗」という不可思議な茶碗があります。

長次郎は、千利休に従い赤樂茶碗、黒樂茶碗を造り後の樂焼を始めた陶工。

先日、東京国立博物館で目にする機会がありました。

なぜ、不可思議かと言うと、茶碗の胴から上の部分が方形、下から底までが半球形。立方体と円球が重なった形。どこからお茶を飲むの?という疑問もありますが、そもそもこの造形が、コンセプチュアルアートのごとく、抽象的な造形で。

建築でこの形は中々無いな、ひっくり返す形はよくあるけれど。。。。。と思いつつ、いや。。。オスカー・ニーマイヤーぽいかな?などとも。

大学で建築を学び始めた頃、安藤忠雄さんを知り、学生には人気で皆が研究するのですが、造形の手法が、むき栗的。円、正方形、長方形、3角形などの抽象的な図形(空間)を重ね、重なりのすき間に何かが生まれるという、造形の手法で、一見単純な手法なだけにとっつき易かったんですね。

手法は単純ですが、生まれてくるモノの凄みはむき栗と同様。

形をつくるということの、面白さ・不可思議さがこの茶碗から伝わって来ます。



茶碗と建築の関係


茶碗と建築は、一見すると関係が薄いように思えるかもしれませんが、実は深い関わりがあります。以下にいくつかの観点からその関係を説明します。


1. 日本の伝統文化と建築

  • 茶道と建築: 茶道は日本の伝統的な儀式であり、その精神は建築にも影響を与えています。例えば、茶室(茶道を行う部屋)は、非常に特別な空間です。茶室は、簡素でありながらも機能的で美しい設計が求められ、そのデザインはしばしば「わびさび」(簡素でありながら深い美しさを追求する考え方)に基づいています。この美学は、日本の建築全般に影響を与えています。

  • 素材と技術: 茶碗は手作りであることが多く、陶器や磁器の技術が使われます。日本の建築にも同様に、伝統的な素材や技術が使われています。茶碗のデザインや制作技術は、建築における材料や技術の選定に影響を与えることがあります。


2. 空間の使い方

  • 茶室の設計: 茶室は、限られた空間を最大限に活用するための巧妙な設計がされています。これと同様に、建築においても限られた空間を有効に使うためのデザインが求められます。茶室の設計からは、空間の使い方や流れのデザインに関する多くの教訓を学ぶことができます。


3. 精神性と美学

  • 心の落ち着き: 茶碗は、使用者に落ち着きと安らぎを提供するためにデザインされています。これは、建築でも同様で、人々がリラックスできる空間を作ることが求められます。茶碗のデザインや使用の仕方から、建築における精神的な要素や美学の重要性を学ぶことができます。


4. ミニマリズム

  • シンプルな美しさ: 茶碗は、シンプルでありながら深い美しさを持つことが多いです。このミニマリズムの考え方は、現代建築にも影響を与えています。無駄を省き、本質的な美しさを追求することは、茶碗と建築の共通のテーマです。


茶碗のデザインや使い方からは、多くの建築的なインスピレーションを得ることができ、逆に建築からは茶碗のデザインや空間の使い方に影響を与えることもあります。


造形的に関して、建築と茶碗の類似性


建築と茶碗の造形的な形には、いくつかの共通点や類似性があります。これらの形状は、機能性、美学、文化的な意味合いが絡み合っており、両者のデザインにおける考え方を理解する手助けになります。


1. 形状の美学と機能

  • シンプルな形状: 茶碗は通常、シンプルでありながら美しい曲線やフォルムを持っています。このシンプルさは機能的であり、持ちやすさや安定性を考慮したデザインです。建築においても、シンプルな形状が美しいとされ、例えばモダニズム建築では、無駄な装飾を排除し、純粋な形状が追求されます。シンプルな形状は視覚的に心地よく、機能的にも優れている場合が多いです。

  • 曲線の使用: 茶碗の多くは柔らかい曲線を持ち、手に馴染む形状です。この曲線の使い方は、建築においても見られます。例えば、現代の建築物や有機的な建築デザインでは、曲線を使って自然な形状を模倣したり、流れるようなラインを取り入れたりします。


2. プロポーションとバランス

  • 対称性と非対称性: 茶碗のデザインでは、対称性や非対称性のバランスが重要です。茶碗の口径や底の形状は、持ちやすさや美しさを考慮してデザインされます。建築においても、プロポーションやバランスは重要であり、建物の形状や構造において、視覚的なバランスや機能的なバランスを取るために様々な手法が用いられます。

  • スケール感: 茶碗は手のひらに収まるスケールの中で、完璧なバランスを持つようにデザインされています。一方、建築物は大規模なスケールで設計されるため、スケール感やバランスがさらに重要です。建物の外観や内部空間のデザインは、スケール感とバランスを考慮して計画されます。


3. 素材とテクスチャー

  • 表面の質感: 茶碗の表面は、釉薬や手触りによって独特のテクスチャーを持っています。この質感は、見るだけでなく触れることで感じることができます。建築においても、素材の選定や仕上げが重要で、外壁や内装のテクスチャーがデザインに大きな影響を与えます。質感の違いは、建物の感触や雰囲気を決定づける要素です。

  • 素材の一体感: 茶碗は通常、ひとつの素材(例えば陶器や磁器)で作られますが、その素材が形状と一体化しています。建築も同様に、素材と形状が密接に関係しており、素材の特性が建物のデザインに影響を与えます。例えば、木材やコンクリートの質感は、建物の形状やデザインに反映されます。


4. 文化的な要素

  • 文化的な意味: 茶碗は、日本の茶道において文化的な意味を持ち、形状や装飾がその文化的背景を反映しています。建築もまた、その地域や文化の価値観や美学を反映することが多いです。茶碗と建築は、どちらもその文化的背景に根ざしたデザインがされています。


茶碗と建築の形状には、シンプルさ、曲線の使用、プロポーション、素材のテクスチャーといった共通の要素があり、これらはどちらも機能性と美学のバランスを取るための重要な要素です。

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