先日、春分の日、季節外れの雪の日に、お茶会に出席して来ました。雪中でしたが、お子様OKというお茶会には珍しい形で、素敵な時間を過ごさせて貰いました。お稽古された学生さんがお点前をして頂いたのですが、立礼式のお茶会でした。
立礼式(りゅうれいしき)とは何?
茶道は普通お茶室の中で、正座をして行います。室町時代から安土桃山時代に渡って形づくられて来た文化ですから、畳みや床に座る習慣を持ったままでお茶を点て楽しみます。お湯を沸かす釜は、畳みに掘り込んだ炉で沸かすか、畳の上に風炉を置いて湯を沸かします。
時代が下り、近年生まれたのが、椅子に座ってお茶を点て、お茶を戴く立礼式という方法です。正座でなく椅子に座ってお茶を点てますから、一見ちょっとお手軽に見えます。お茶室に椅子と立礼卓という台を持ち込んで点てたり、ビルのロビーのようなところで点てたり、外で屋天のお茶をしたり、場所を選ばない、フットワークが良さげなのもこの立礼式の特徴です。
立礼卓のおかげで、椅子でのお点前
立礼卓とは、机の様な台(卓)で、テーブルに釜を掛ける(置く)場所があったり、棚があったり、その机でお茶を点てることが出来るようにしている卓の事です。
スケッチに描いたのは、今回のお茶会でお使いになっていた立礼卓です。茶盆点でしたので、釜ではなく鉄瓶で湯を注ぎます。この立礼卓は先々代のもので、今は形が全然違います。大胆なぐらいにデザインが変わっていて、多分お点前も少し違うのだと想像できます。どこにでも持ち運べる為、可動家具というか。。。
移動茶室的な要素のある茶道具です。ちなみに私自身はまだ立礼卓でのお手間の経験は無く、その場の不思議な面白さを味あわせて貰いました。
茶道は正座が難点
茶道は正座が基本です。正座も修行の内。そもそもお茶室とは、座った位置で眺める、使うように出来ていますから、低い視線と低い天井高さがもっとも心地良くなる空間構成がされています。
ただ、この正座が難点で、膝を痛めている方は正座出来ませんし、そもそも正座の長い時間するのに慣れている人は余り多くありません。それどころか、椅子での生活に慣れた我々現代人は床や畳に座るという事すら余り慣れていません。男性の客は大事な場面以外は胡坐をかいていても構いませんが、お茶を戴く、お点前をするシーンでは正座が必須。この正座の痛みに茶道のお稽古を始めたばかりの頃は、大変な思いをしました。
外国人にも茶道を
近代になり、西洋の文化が入って来て、座敷に椅子・机を持ち込む生活も持ち込まれます。そんな中、座位で座らない、椅子生活の外国人にも茶道を体験して貰いたい、広めたいという考えから、座って点てる立礼の手前が生まれたと言われています。
歳を重ねても
年配の方がお茶から離れる理由の1つに、正座の辛さがあるそうです。立礼式のお点前であれば、体の心配無く、お茶を点てられますから、ユニバーサルデザイン・バリアフリーの茶道とも言えますね。
可動・移動・バリアフリー、色々の要素が詰まっていますが、普段のお茶室とは違う、独特な空間が生まれる、お茶の楽しみのひとつです。
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