お茶室には、炉が切ってある。炉とは、畳みの一部を掘り込み、釜を炉の中に仕込み、炭で火を焚き、湯を沸かす場所のこと。炉の中には釜を入れて、湯を沸かすから、かなり熱くなる。本来は炭で火を焚くが、お稽古場では電気式の炉を使って湯を沸かす場合が、今では多くなっている。
釜には蓋をして、湯を沸かすが、釜自体は鋳物で出来ており、釜蓋は鉄で出来ているので、釜蓋もあつくなったりする。この蓋の開け閉めにも作法があり、コツがあった。
釜の蓋を開けたり閉めたりするのは、適温にする為
お茶を点てる時、釜の蓋を開けたり、閉めたり、切りを掛けたりを繰り返す。何でそんなことをやっているかと言えば、湯の温度を調節している。空けたり閉めたり、湯返しという湯を混ぜる動きをしたり、蒸気を逃しながら、お茶が美味しくなる適温に湯をしている。意外と簡単そうだが、これにもコツがある。体とモノを扱う行為には、何にでもコツがあるということなんだな。
炉縁は取替えるもの
炉の縁を四角に縁取っている、玄関の上がり框のような黒い木。この炉縁、実は取替えられる。初めて取り替える処を見た時は、ちょっと驚いた。いつもは普通に黒い塗装された木が、初釜のときにゼブラ柄の漆で塗られた縁木になっている。炉縁は茶室に取り付けられている訳ではなく、炉の上、畳みの横に置いているものなので、簡単に変えられる。ある意味、茶道具のひとつで、茶事ごとに異なる炉縁で、その茶事の構成を組む1つになっている。当然、炉縁も名品があり、貴重なモノも多く、湯を垂らし劣化させるのは避けたいものの1つになる。
釜の蓋を開け閉めで、蒸気で焼けど・湯が垂れるリスクが
釜の蓋を開け閉めする時に、ちょっと気をつけたいのが、火傷。湯がかなり熱くなっているため、蓋を開けると蒸気で火傷をする事がある。実際、同時期に茶道を習い始めた方が軽い火傷をしてしまった。
お稽古をしてみると、実際熱く、気を使う。釜の蓋も鉄で出来た蓋で、熱くなるので、袱紗(ふくさ)という布で蓋の摘みを持って釜蓋をあける。蓋は蓋置きに置いておくのだが、そのうち冷えるので、蓋を閉める時は、素手でしめる。お茶を入れるだけですが、面白い、その都度、適切な動きがお手前になっているんだな。
釜蓋の開け方のコツ
釜の蓋は最初、切りを掛けられている。(※最初の画像が釜に切がかかっている状態)
切りを掛けるとは、ちょっとすき間をあけて蓋をしている状態で、沸騰しないようになっている。そこから、袱紗を使って蓋の摘みを持ち、一旦完全に閉めて、蓋を袱紗で清めてから、蓋の先をちょっと空ける。蓋の先を上に持ち上げ、空間をつくる事で、湯の蒸気を逃がす。これをしないで、いきない蓋を開けると蒸気が手にかかり、火傷をしてしまう。ゆっくり蒸気を逃したあと、釜蓋を平行に引いて、あけるのだが、最後、釜の口のところに蓋を触れさせ、蓋についた湯のつぶを切る。ここで湯が上手く切れないと、炉縁の上で湯が垂れてしまう。
湯を切るのにもコツがあって、蓋を少し傾けて釜の口に触れさせると上手く切れると、お稽古で教えていただいた。蓋に限らず、湯や水滴を切る、拭うシーンが茶道のお手前にはたくさん出てくる。湯を扱う行為の茶道だから当たり前ですが、これが中々難しい。上手くできると、綺麗なお手前になるのですが、ぽたぽたと畳みに湯を落としてしまうことも、間々あり、ドキドキするところだ。
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