生命力のある・素材感
建物概要
所在地:東京都板橋区
構造:鉄筋コンクリート造・リノベーション
延床面積:128.24㎡
Design:Ogino Takamitsu Atelier
Photo:Ogino Takamitsu
施主の想い
会議室として使われていた会社のフロアのリノベーションです。コロナ禍での計画で、社会状況の変換により当初は考えていなかった、新規事業を行う為のラボ機能を持たせたいという依頼でした。海外(フランス・アメリカ)在住歴の長い施主からは、風情を感じる少しクラシックなデザインをリクエストされました。
要望のポイント
・築50年以上の鉄筋コンクリート造建築の内部リノベーション
・会議室として使われていたスペースにラボ機能を持たせる
・海外在住歴の長い施主の、クラシックな内装のデザイン
・求職者が働きたくなる、デザイン
提案・設計内容
壁・天井・床の仕上材を撤去し、コンクリート打ち放しをそのまま見せる内装を提案しました。荒く古いビンテージのコンクリートと、少し入だけ入れる新しく美しい素材のからまりと対比が、より素材感を感じさせ、生命力のある空間になっています。
コストを抑える予算調整しながらも、デザイン性を確保する為に、既存の古びたカッコ良さを生かした設計をしました。
市松に天井を組んで、場所に軸(目盛り)をつくり居場所の把握が出来る事で、場所の拠りどころとなる設計としました。社会の変化が速い中で、事業も変化していく事を想定し、使い方を固定し人やモノの配置を固定するのではなく、変化し続けられる仕組みを考えました。
荒々しい既存のコンクリート・コールテン鋼のサイン・鏡面のLGS天井下地・合板など異素材の対比が、プリミティブな力強い空間をつくってくれています。
完成後の施主の声
壁に掛けられているのは、パリの写真で施主が掛けています。
施主の仕事人人生の中で、これまでで一番頑張ったパリ時代を思い出し、これからまた仕事を頑張ろうという意味だそうです。このモノクロの写真が、コンクリートのグレー、市松天井のブラウン・壁と扉のブラックと共鳴して、力強さと洗練された場所がつくられています。
既存の仕上材を撤去し出て来た、コンクリートは荒く原初的な姿が、生命力のある空間になりました。
コンクリートの素材と、新しく入った素材のからまりと対比が、素材感をより強く感じさせます。
市松天井板の間に、ダクトレールを仕込みました。ダクトレールは素材に隠して組み込む方と目立たず自然です。
サビ加工した、コールテン鋼板でサインを製作しました。時間の経過で姿が変わっていく素材です。
装飾的なはずの框扉を一見そっけないくらい、ザクっとデザインしました。ブラックの塗装と金色の取手・鍵穴との対比が、クラシック感をよりましてくれます。黒と金は相性のよい色です。
荒々しい、ビンテージなコンクリート空間にこの扉がある処が、なんとも。。。乙な感じです。
仄暗さが、かえって素材を美しく見せてくれました。コンクリートの打ち放し、コールテン鋼、合板のローズウッド、艶消しのブラック塗装。影は美しいです。
天井を吊る為の、骨組みLGSは通常隠されている素材です。鏡面素材で見えないのは勿体ないと常々想っていたので、綺麗に割り付けて露出して美しく見せています。
リノベーション解体で、壁の仕上材を剥がすとなぜだか不思議な模様が出てきます。新築の時には仕上材で隠してしまうので、見映えを整えていないせいですが、水墨画や抽象画の様で中々良い質感です。
デザインに取り入れない手は無い!と見せ場にしました。
コンクリートが、実は太古から使われている原初的な素材だという事を時間します。プリミティブな空間です。